2021年7月15日 15:00

Work From Matsudo ~松戸で働く~

日本の大きなテーマとして2010年代後半から掲げられるようになった「働き方改革」。「働く人々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で『選択』できるようにするための改革(厚生労働省)」と定義される中、起業やフリーランス、副業(複業)、時短勤務、週休3日制など様々なワークスタイルが広まっています。また、昨年来のコロナ禍により、自宅やコワーキングスペース、さらには休暇先でのワーケーションなど、「働く場所」にも大きな変化が表れてきています。

松戸市には、多様な働き方の推進や新たな挑戦に取り組む人々を支援するための制度や施設があります。本号では「松戸で働く」をテーマに、松戸市の起業支援施設や「新たな働く場・働き方」を生み出すための制度を紹介します。

※掲載情報は2021年7月14日時点のものです。

1.松戸スタートアップオフィス

「起業希望者」や「新たな働き方」を望む市民を支援

「松戸に住みながら起業したい」、「創業した会社を軌道に乗せたい」、「テレワークの拠点がほしい」など、“松戸市でビジネスに挑戦する人”の心強い味方になる施設が『松戸スタートアップオフィス(Matsudo Start up Office、以下「MSO」)』です。

MSOはコワーキングスペース併設型のインキュベーション(起業支援)施設で、松戸市での「創業の促進」、「起業家の支援・育成」、「多様な働き方」の推進を目的に2019年4月に設立され、オープン以来、多くの方々にご利用いただいております。

MSOの特長の1つは、起業支援の専門家であるインキュベーションマネージャーによる支援です。創業方法や経営力の向上、IT環境の整備、補助金や助成金の活用といった起業・経営に必要な打ち手について、親身で的確なアドバイスと最新情報を得られます※1。また、外部講師を招聘し、ビジネス動画の制作法やクラウドソーシングサービスの活用法を学べるセミナーや勉強会などの様々なイベントを開催し、起業や事業の推進に役立つ知識・技術の提供に努めています。

MSOには“アート”の存在も欠かせません。数々のスタイリッシュなオフィスファニチャーで構成されたフロアには、壁面や家具などの随所にアート作品が配置されています。このオフィス空間のデザインには、「アート作品を眺めることにより、普段の発想を超えた、ビジネスにおける新たなクリエイティブの誕生を促したい」といった意図が込められています。なお、作品は地域のアーティストやクリエイターによるもので、松戸市内外の方々に地域のカルチャーを紹介する役割も担っています。

ワークスペースは、個室・ブース(共に主にインキュベーションを求める方向け)とコワーキングスペース(主にフリーランスやテレワーク環境を求める方向け)があり、利用者のフェーズに合わせたプランを選択できます。また、電源・Wi-Fi・複合機などの環境も完備されており、働きやすい環境が整っています。さらに、提携している都内や関東近県・大阪のレンタルオフィスの相互利用も可能です。

今後もMSOから数多くの起業家が誕生できるよう、積極的な環境づくりに取り組んでいます。

※1 創業相談は、毎月開催されており、施設を利用している会員の皆様のほか、市内で起業を考えている方、起業後間もない方などの相談も無料で承っています。

エレベーターを降りた黒塗りの壁の向こう側には、木目調をベースとしたオフィスが目に飛び込んできます。13階からの眺望は格別です

様々なアーティストの作品を定期的に入れ替えて展示しています

【Information】
住所:松戸市松戸1307-1 松戸ビル13F
Tel:0120-917-854
Contact:https://matsudo-startup.jp/contact/
アクセス:JR常磐線(快速・各駅)・新京成線「松戸」駅西口から徒歩約3分
Webサイト:https://matsudo-startup.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/matsudostartup/
Twitter:https://twitter.com/matsudo_startup
Instagram:https://www.instagram.com/matsudo_startup/

2.松戸市サテライトオフィス等立地促進補助金制度

働き方や出店施策の多様化等に対応した施設が続々登場

2020年度に創設された『松戸市サテライトオフィス等立地促進補助金※2』は、雇用や昼間の人口の増加による経済振興を目的に、サテライトオフィスやイノベーション施設の集積を図るため、事業者による施設整備を支援し、設置費用(初期費用)の半額(上限額800万円)と運営費用の半額(上限額300万円)を補助する制度です※3

同制度を活用した第1号案件を含む3施設が、今年オープンしました。働き方改革やコロナ禍によってテレワークを採用したり、新たな事業展開を模索する企業・組織が増加していることなどから、いずれの施設も早くから注目を集めています。

※2 同制度に関する松戸市のWebサイト。https://www.city.matsudo.chiba.jp/jigyosya/syoukougyou/sateraito.html
※3 補助事業者が年間を通じて創業支援や企業育成、オープンイノベーションの推進などの「利用者のスキルアップ等を図る事業」を実施する場合、設置費用の3分の2(上限1,000万円)・運営費用の3分の2(上限額500万円)となります。

(1)Coworking Space Flat(コワーキング スペース フラット)

松戸市サテライトオフィス等立地促進補助金の活用第1号となる施設で、今年2月にオープンしたのが、カフェとバーを併設したコワーキングスペース・シェアオフィス『Coworking Space Flat』(オーナー・花泉裕一郎さん)です。鉄道の利便性が高く、市内有数のベッドタウンである新松戸から都心に通勤していた人たちなどが、貴重なテレワークスペースとして活用しています。

元は学習塾だった建物内に入ると、まず目に留まるのは飲食店勤務経験のあった妻・美帆さんが希望したカフェ・バースペースです。コーヒーや季節のドリンク、軽食のほか、バータイムにはお酒なども楽しめます。休憩時間や仕事終わりに利用者がリフレッシュするために利用したり、カフェ・バーだけを利用するために来店する方もいるそうです。

カフェ・バースペースの奥にあるコワーキングスペースは、高い天井とオフィスツールのゆとりある間隔での配置が、見た目以上の開放感を生み出しています。個室やこたつ席(冬季のみ)も備えています。

不動産会社に勤務していた花泉さんは、起業を思い立ち昨年6月に退職。コロナ禍での在宅勤務中に感じた、「自宅近くにシェアオフィスがあったらよかった」という考えから、自ら作り、運営すると決めました。しかし、構想を立てたものの、収支面で諦めざるを得ない状況に陥りかけたときに補助金制度を知り、申請して採択されました。花泉さんは、「補助金に起業の背中を押してもらいました」と語り、制度の存在と制度を活用できた喜びを感じていました。

花泉さんが同施設を運営していてうれしいことは、「また来ますね」という利用者からの声をいただけることだそう。「居心地の良さを感じてもらえたからこその一言だと思っています。もっと多くの方々に場の魅力を知っていただきたいです。カフェ・バー利用のみでも、コワーキング利用のみでも、ぜひ一度お越しいただき、雰囲気を味わってもらいたいです」と紹介してくれました。

憩いの場であるカフェ・バースペース

冬になると右側のスペースにはこたつが登場、左側には個室スペースもあり人気です

オーナーの花泉裕一郎さん

【Information】
住所:松戸市新松戸3-289 SBC第一ビル2階
電話番号:047-710-3381
営業時間:日によって異なります。ご利用の際は必ずWebサイトやSNSでご確認ください。
定休日:なし
アクセス:JR常磐線(各駅)・武蔵野線「新松戸駅」から徒歩約10分
Webサイト:https://coworkingspaceflat.com/
Facebook:https://www.facebook.com/coworkingspaceflat
Twitter:https://twitter.com/CoworkingFlat
Instagram:https://www.instagram.com/coworkingspaceflat/

(2)Coworking Kitchens 松戸(コワーキングキッチンズ マツド)

飲食店の開業リスクを低く抑えたい事業者や起業志望者に最適な食のインキュベーション施設 『Coworking Kitchens 松戸』が、今年3月に稔台にオープンしました。

本施設は、主にデリバリーやテイクアウト用の料理を作ることを目的とした「クラウドキッチン」と呼ばれる形態をとっています。飲食スペースはなく、近年は都市部で増加傾向にあるスタイルです。テイクアウトやデリバリーなどの新しいスタイルで飲食業を始めたい方や、実店舗運営からの業態転換を考えている方、一度は廃業したものの再度店をもちたいと考えている方などを対象に、厨房機器を備えたキッチンを月額または時間単位で提供しています。

月額で利用できる完全個室型キッチン3室と時間単位で利用できるシェア型キッチン1室で構成されており、完全個室型キッチンは現在全て契約済みです。松戸市内に未出店だった丼店のフランチャイジーのほか、寿司の出前や仕出しを中心に展開している店舗やタコス・ビビンバ・カレーなどを取り扱う個人店が入居しています。この業態のニーズの高さについて、同施設の責任者で株式会社あきない総合研究所の西澤佳男さんは、「飲食店を開業するには、店舗費用や厨房設備などに多額の資金が必要です。それらを抑えられるため、クラウドキッチンに大きな関心が集まっている」と分析しています。また、「クラウドキッチンは都内で増えていますが、同等の設備を備えた所の利用料はもっと高額です。松戸だからこそ、より挑戦しやすい価格でサービスを提供できるのです」と述べ、立地のメリットを強調しました。

オープン後に西澤さんが「この場所を選んでよかった」と思ったのは、事業者のニーズの高さを感じた時、そして地元の方々からワクワクした表情で「新しいお店ができていいね」と言われた時だそうです。「新しいお店ができるのは、地域にとって喜ばしいことなのだと再認識しました。飲食事業者を支援しながら、地域の人々をワクワクさせられる場であり続けたい」と今後の活動の意気込みを語ってくれました。

店内に入ってすぐの所に、2店舗の商品受取窓口があります

充実した厨房機器を備えたキッチンスペースは全部で3室です

【Information】
住所:松戸市稔台7-7-7 田中ビル1階
Tel:050-3623-4477
アクセス:新京成線「みのり台」駅から徒歩約6分
Webサイト:https://coworkingkitchens.com/
Facebook:https://www.facebook.com/CoworkingKitchens/
Twitter:https://twitter.com/CoworkingKit
Instagram:https://www.instagram.com/coworkingkit/

(3)松戸アソシエーションデザインセンター〔M.A.D.center(マッドセンター)〕

『松戸アソシエーションデザインセンター』は、大企業から小さな会社の起業家やフリーランスの事業者まで、規模・業態ともに多様な事業者が集うことによるプロジェクト型案件の共創を目指した施設です。

施設を運営するのは、松戸を拠点に数々のプロジェクトを推し進めてきたまちづくり会社「まちづクリエイティブ」です。同社の寺井元一代表は、「行政・地域・クリエイター・大企業が連携を図れる場をつくりたい」と考えていたことから、松戸市サテライトオフィス等立地促進補助金を活用した施設を企画。まちづクリエイティブが元々運営していた7階のイベントスペースと6階のスペースを合わせて整備し、コワーキングスペース・インキュベーション施設が誕生しました。「行政や地域の商店主など、様々なジャンルの人々と共に進める仕事が増え、1つの場に籠らず、外に出ていく必要を感じた(寺井さん)」ことから、同社も管理者として入居しています。

施設名の「アソシエーションデザインセンター」には、主体性を持った地域の関係者や外部人材によって、開放的な体制を組成する場にしたい、という意味が込められています。寺井さんは「利用者同士がマッチングして、おもしろい協業がいくつも生まれるような施設にしたい」と期待を膨らませています。

6階には少人数のグループで利用できるワークスペース以外に2つの会議室やテラスを備えているほか、座席としても利用できるオブジェやアート作品も展示されており、クリエイティブな思考を深める場に最適です。7階には、電源数が豊富なワークスペースのほか、映像配信や音楽収録に必要な機材やスペースが揃っており、カルチャーの制作・発信拠点としても活用できます。本施設への入居希望者の一般募集は、 8月から開始する予定です。

6階のワークスペースには、木製のオフィス家具やグリーンのオブジェを配置。壁面にはアーティスト・HOLHYさんの作品も描かれ、クリエイティブな空間となっています

斜めの壁に丸い窓が印象的な7階のワークスペース。コワーキングスペースの利用時間外には、イベントスペースとしての利用も可能。音声や映像の配信・収録設備も充実しています

【Information】
住所:松戸市本町20-10 ルシーナビル6F・7F
Tel:047-710-5861
アクセス:JR常磐線(快速・各駅)・新京成線「松戸」駅西口から徒歩約3分
Webサイト:https://madcity.jp ※同施設に関するページは現在準備中