ウィザーズ・オブ・ザ・コースト 日本事業部

ウィザーズ・オブ・ザ・コースト 日本事業部 オンラインプレスルームです。

最新セット『ストリクスヘイヴン:魔法学院』発売を記念して 「現代の魔法使い」落合陽一さんにインタビューを実施 『人生はプレインズウォーカー、 人生で大事なことはマジックで学んだ』

最新セット『ストリクスヘイヴン:魔法学院』発売を記念して
現代の魔法使い」落合陽一さんにインタビューを実施
『人生はプレインズウォーカー、人生で大事なことはマジックで学んだ』

<プロフィール>
落合陽一/Yoichi Ochiai
1987年生まれ。メディアアーティスト。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。「魔法の世紀(PLANETS)」、「デジタルネイチャー(PLANETS)」、「2030年の世界地図帳(SBクリエイティブ)」など著書多数。「物化する計算機自然と対峙し,質量と映像の間にある憧憬や情念を反芻する」をステートメントに、研究や芸術活動の枠を自由に越境し、探求と表現を継続している。オンラインサロン「落合陽一塾」主宰。

取材・文 石井英男

 落合陽一さんは、メディアアーティスト、研究者、大学教員、実業家、マルチタレント、写真家など、非常に多くの肩書きを持ち、様々な分野で活躍している「現代の魔法使い」。テレビにも多数出演され、台湾の政治家オードリー・タンさんとの対談も話題となりました。
落合さんは、9歳の頃にマジックに出会い、青春時代をマジックとともに過ごしてきました。その腕前は、デジタル版で世界20位以内を達成するほどです。彼は、計算機ホログラムを駆使して魔法のような物理的な現象を巧みに操り、空中にモノを浮かせて自由にコントロールしたり、触れる光で空中にパターンを描き出すなど、驚くべき成果を次々とあげており、まさにプレインズウォーカーを体現した人物でもあります。
 ストリクスヘイヴンでは、「日本画ミスティカルアーカイブ」と呼ばれる63種類のカードが、新たに書き起こされた日本画イラストで再録されます。そこで、マジックプレイヤーとしての腕前もさることながら、メディアアーティストとして表現に従事し、金沢美術工芸大学客員教授や京都市立芸術大学客員教授を務め、美術にも造詣が深い落合さんに、ストリクスヘイヴンでの日本画ミスティカルアーカイブに関する感想や、マジックとの関わりについて、お話をうかがいました。

日本画ミスティカルアーカイブの中で気に入ったカード、使っていたカードは?
 僕は現役で使えなかったんですけど、今回の日本画ミスティカルアーカイブの中だと《悪魔の教示者》の画がカッコイイです。それに、タッチが簡素というか、ああいう墨絵みたいなタッチはマジックの過去カードでは珍しいと思います。
 あとは《神聖なる計略》とかは和風絵がすごい。よくできていると思います。《対抗呪文》も祝詞で祈っていそうでとてもいい感じですね。《選択》や《否認》などもよく使っていました。

       

  

 僕は基本的に青黒を使っていたので、この中だと《時間のねじれ》《渦まく知識》とかが懐かしいです。こんな《暗黒の儀式》があるのを見るとドキドキします。《暗黒の儀式》は久しぶりに見ました。《暗黒の儀式》も好きなんです。

  

日本画ミスティカルアーカイブに対しての評価は?
 メディア史や美術の教員からすれば、正しいプロセスで描かれた絵は一つもないように感じます。日本画の画風として描かれていますが日本画の作法に則っていません。構図というよりは、カラートーンの使い方とタッチの真似方が日本画的かといわれると、日本画的ではないところが混ざってしまっています、しかしながらそれが独特の良さにもつながっている。日本画風スタイルや中国風スタイルが混在していたり、アニメっぽい二次元っぽい絵と日本画タッチとイラストレーションと、平面っぽい絵が混在していたりするので。必ずしもそれが「ジャパンの絵」かといわれると、そうではない絵がほとんどなんですけど・・・。
 ただチャレンジとして、従来のいわゆる写実的洋画、つまりフォトジェニックな絵を描く、油絵的なマジックの雰囲気とは違うイラストになっていると思います。

日本画ミスティカルアーカイブと従来のカードとの大きな違いは?
 一番大きな違いは余白を許したことだと思います。マジックのカードは多くの場合イラストであまり余白を作らないんですが、日本画のカードはキャラの周りやバックグラウンドがシンプルでほぼ余白ができています。マジックって一部のエキスパンションを除けばあんまりシンプルなバックグラウンドで余白を作っているものがないんです。
 それと、余白のとり方と構図のとり方が今までのマジックと違うのと、カード名が縦書きになっているのも画期的ですね。カード名を縦書きにしたのは初めてではないですか?マナシンボルを直接書くのはやったことがあると思うんですが・・・。
あと、日本画のカードはレアリティ表記が判子のようなデザインになりましたね。これが結構今までと違いますね。レアリティ表記をイラストがある上のほうに直接書いたことは今までなかったので、デザイン上もだいぶ違います。日本だから縦書きにしたかったのかなと思っています。判子は掛け軸などでいう落款ですよね。それから下のイラスト名のところが、日本画のカードは日本語表記になっています。カタカナだったり漢字だったり、これも結構珍しいですよね。
 今回は、結構若いイラストレーターが描いているのかな?という印象のカードが多いです。画を見ていても、自分自身がこれを描きたいんだろうな、仕事で描けて嬉しいんだろうなという風に見えます。マジックの仕事って若手にとっては大きい仕事になるし、ひょっとしたらマジックのプレイヤーだった人もいるかもしれないから、なかなか楽しんで作っているんじゃないかなという感じがします。

マジックを通して得た人との関わり、影響は?
 そういう意味ではマジックはかなり影響しています。この間、台湾のオードリー・タンさんと対談したんですが、2つめに聞いた質問が「マジックで好きな色は何?」で、「Absolutely blue」(絶対に青!)と言っていました。オードリー・タンさんらしいなという印象でした。
 マジックの好きな色がわかると、性格もわかると思っています。例えば、青と黒と赤が好きだと、常に計算ばっかりしているイメージです。だって赤の火力系のライフスタイルって、常にライフをギリギリ0点にできる手段しか考えていないんですよ。
 赤をやっているときは、リーサルに向かっての点数調整だけずっと考えているわけです。青をやっているときは、相手のデッキ枚数のことやパーミッションするための数字のことだけを考えています。相手のマナが尽きるタイミングや相手の対応がなさそうなタイミングを狙ってパーミッションを打っていくわけなんですけど。
 あと、黒はもうちょっと自分目線ですよね。自分がギリギリ死なないように相手を倒すことを考えているのが。どちらかというと、赤より自分も死なないようにしないといけないから。青と赤の中間くらいで黒なんですが。なので、そういうスタイルで戦っている人と、白とか緑でやっている人は全然違うと思います。

落合さんにとってマジックとは?
 マジックについてどう思っているかというのは、人生はプレインズウォーカーだと思うところから始まります。あれに尽きるんです。ゲーム環境によってアグロでいくか、コントロールでいくか、コンボでいくかみたいな基本戦略を考えたり、手札を全部覚えたりとか、スタンダードのカードプールを全部記憶したりすることから地味に強くなっていくじゃないですか。どこまでいっても配られた札でしか戦うことはできないんですよ。それにCPUと人間だと、人間も結構強いですよね。本気を出した機械には負けそうな気はしますが、運のゲームだから、それは始まった瞬間には決まっていません。だって、運が悪いAIと運がいい人間だったら、運のいい人間のほうが勝ちますよね。
 世の中には、1対1の対人ゲームで数百回対戦して1回も負けたことない人が平気でいるんです。例えばレスリングです。マジックは1対1のゲームなのに確率論です。だからそこがいろいろ楽しいんですよね。そういった面では、いろんな人生についての示唆があると思っています。だって、人生は確率論で戦うものばかりですよね。うまくいくか、うまくいかないかが、確率の問題なものがほとんどです。それで一喜一憂せず、どうやったらある程度ポジティブに、「わりかし運良くいけてるんじゃねえか」と思い続けられるかは結構重要だとは思っています。

<落合さんのサイン入り日本画ミスティカルアーカイブ・カードをプレゼント!>
 今回の『ストリクスヘイヴン:魔法学院』発売を記念して、落合さんから日本画ミスティカルアーカイブ・カードにサインをいただきました。マジック:ザ・ギャザリング公式ツイッター(@mtgjp)のプレゼントキャンペーンへのご応募で10名様にプレゼントいたします。奮ってご応募ください。
※届くカードはランダムとなります。

※画像はイメージです