2023年3月14日 16:30

レスリング選手初のグランドスラム・須﨑優衣選手を生んだ街・松戸から世界を目指す、期待の小学生レスラーたち

松戸市出身者初の五輪金メダリストで、東京2020オリンピックを含めた各世代の世界大会を制覇し、男女を通じてレスリング選手初となるグランドスラム[※1]を達成した須﨑優衣選手は、松戸ジュニアレスリングクラブでレスリングを始め、研鑽を続けました。

そんな松戸市に、将来有望な若きレスリング選手たちがいます。本号では、今年1月に開催された2022年の全国大会上位者のみが参加できる大会「第27回全国少年少女選抜レスリング大会(以下「選抜大会」)に出場した2名を紹介します。

※本資料内の情報は、2023年3月13日現在のものです。

 ※1: レスリングのグランドスラムは17歳以下、20歳以下、23歳以下、世界選手権(シニア)、オリンピックの世界主要5大会を制すること。

須﨑優衣選手の東京2020オリンピック優勝時の記事はこちらをご参照ください(Topic3):https://www.pr-today.net/a00241/opr/1139/

選抜大会優勝!片足タックルを武器に、全国2位の兄の背中を追う   

大谷凌斗(おおたにりょうと)さん/松戸ジュニアレスリングクラブ 所属


松戸市立矢切小学校5年の大谷さんは選抜大会の男子フリースタイル・5年生28kg級に出場し、優勝を果たしました。

歳からレスリングをスタート

大谷さんが本格的にレスリングを始めたのは、愛知県に住んでいた3歳の頃。6歳年上の兄・哉斗(かなと)さんがレスリングを習い始めたことがきっかけでした。

小学2年の時、大谷さん一家は愛知県から松戸市へ転居しました。松戸でもレスリングを続けるべくチームを探そうとしていたところ、愛知の所属チームと現在所属している松戸ジュニアレスリングクラブの監督が知人同士だった縁から、同クラブへ移籍しました。

全国規模の大会への挑戦、初年度から大活躍

新型コロナの影響で様々な大会が中止となり、大谷さんが本格的に全国大会に出場できるようになったのは今年度からでした。

これまで全国の試合に出場できなかった鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように、大谷さんはいきなり結果を出します。2022年5月に開催された「第36回東日本少年少女レスリング選手権大会(以下「東日本大会」)」の小学5・6年の部・26kg級で優勝すると、続く7月に開催された「第39回全国少年少女レスリング選手権大会(以下「全国選手権」)」の小学5年・26kg級でも優勝し、選抜大会への出場権を獲得しました。

相手を回す大谷さん(赤)
※NPO法人全国少年少女レスリング連盟 大会YouTubeから抜粋

圧倒的なスピードで選抜大会を制覇

選抜大会の準決勝は、東日本大会の決勝で対戦した相手との再戦となりました。相手に2ポイントを先行されたものの、「組み手で有利だったので焦りはなかった(大谷さん)」と第1ピリオドのうちに追いつくと、第2ピリオドに素早い片足タックルからのけさ固めでフォール勝ちを収めました。

大谷さんは、全国選手権3位の選手との決勝でも持ち味を発揮しました。俊敏な動きで相手を牽制すると、隙を見つけては、すかさずアンクルホールドを仕掛けます。第1ピリオドの2分終了時点で7対2でリードすると、第2ピリオドも肩固めなどで攻め続け、守っては得意のグラウンドで相手の攻撃をいなし、残り12秒を残してテクニカルフォール勝ち(12対2)で優勝。全国大会のチャンピオンとして、圧巻のレスリングを披露しました。

自分の武器を磨き続け、体格差を乗り越える

レスリングは体重によって階級制が設けられています。小学6年になるとその最下限は小学5年時よりも高くなるため、同じ階級でも成長の速度によって体格に差が出る可能性もあります。現在は同学年の男子と比較すると小柄な大谷さんですが、そんな状況を気にする素振りを見せません。それは、普段から自分よりも1つ、2つ上の階級の相手と練習をしていることに自信を持ちながら、自分の武器である片足タックルとグラウンドの守備にさらに磨きをかける意欲にあふれているからです。

また、体格の壁を乗り越えた存在が身近にいることも大きいでしょう。現在高校2年の兄・哉斗さんは、レスリングの名門・霞ケ浦高等学校(茨城県)のレスリング部に所属しています。昨年のとちぎ国体では、少年男子グレコローマン60kg級で2位になるなど、今後の活躍が期待される選手の1人です。大谷さんの母・奈津恵(なつえ)さんによると、「いまの凌斗の体格は、兄の同じ頃とあまり変わらない。兄も高校に入学してから背が伸び、体重も増えた」そうです。

高校進学前には兄弟で練習する時期もありましたが、現在は寮生活をしている哉斗さんと話す機会は少ないと言います。「得意技の片足タックルを磨いて、これからも試合に勝ち続けたい」と目標を掲げている大谷さんは、強くなるために、先を行く兄からアドバイスをもらう機会も今後増えるでしょう。さらなる延長線上には、大会での兄との真剣勝負が待っているかもしれません。

憧れの人と同じ舞台に!「天皇杯出場」という新たな目標

吉田埜愛(よしだのあ)さん/フェニックスクラブ 所属

松戸市立古ケ崎小学校5年の吉田埜愛さんは、昨年7月に開催された全国選手権の「女子の部・5年・33kg級」で優勝し、選抜大会の出場権を獲得しました。

吉田さんの全国選手権に関してはこちらの記事をご参照ください:
https://www.pr-today.net/a00241/opr/1442/

成長期に伴い、2階級アップして挑戦

全国選手権で優勝した夏以降成長期に入った吉田さんは、王者となった33kg級から2つ階級を上げた40kg級での出場を決意しました。「半年の間に2階級上げるケースはまれ(父・愁人さん)」で、通常は1階級ずつ上げて、それに合わせて筋肉をつけていくそうです。吉田さんは階級を上げると決めてからは、体重が不利にならないよう、上限の40kgに近づけるべく食事の努力も怠りませんでした。

チャンピオン同士の熾烈な闘い

その努力の甲斐もあり、準決勝では相手に1ポイントも与えることなく試合を進め、最後はフォール勝ちを収めて決勝進出を果たしました。決勝の相手は1階級上げて選抜大会に挑んでいた全国選手権5年・36kg級の王者で、33kg級王者の吉田さんとはチャンピオン対決となりました。

吉田さんが先制し立て続けに4ポイントを奪うと対戦相手も負けじとポイントを重ね、4対4の同点で第1ピリオドを終えました。第2ピリオドに入ると、柔道にも取り組んでいる相手の投げ技と固め技に苦しめられて3ポイントを失うとそのままタイムアップ。吉田さんは4対7で惜しくも準優勝となりました。

悔しさをばねに、成長あるのみ

「決勝では1度勝ったことのある相手に負けて悔しかった。得意技のタックルに入っても、相手があまり持ち上がらなかった」と選抜大会を振り返った吉田さんは、次の大会で勝つための準備を既に始めています。相手に力負けしないための筋トレに励んでおり、学校の担任(男性)に腕相撲で勝てるまで筋力がついてきました。さらに、同じクラブ内での各階級の全国チャンピオンたちとの練習で技術も磨き続けています。

憧れの須﨑選手と同じ舞台を目指す

昨年末、吉田さんのレスリングに取り組む熱量を高めてくれた出来事がありました。12月に駒沢体育館(東京都世田谷区)で開催された天皇杯全日本選手権を会場で観戦し、決勝を含む全4試合で1ポイントも奪われずに優勝した須﨑優衣選手の雄姿を目の当たりにしたのです。憧れの人から刺激を受けた吉田さんには、「いつか自分も同じ天皇杯の舞台に立ちたい」という新たな目標ができました。その目標が叶う時、吉田さんの目の前に立ちはだかるのは、もしかすると須﨑選手かもしれません。