アーティスト・イン・レジデンス開始10周年 累計636人のアーティストが松戸市の文化発展に貢献 ２０２３年10月からはドイツ・韓国のアーティストが来日

「PARADAISE AIR」がある松戸駅前のビル（撮影：加藤甫）

松戸市では、2013年5月にアーティスト・イン・レジデンス事業を立ち上げ、松戸駅前の旧ホテル上層階に国際的な文化芸術の発信拠点「PARADISE AIR」を設置し国内外のアーティストの滞在制作を支援しています。また、滞在アーティストと市民が交流できることで、世界的に多様な文化芸術に触れてもらう機会も創出しています。今回は、今年で10周年を迎えたこのプロジェクトの内容を改めて紹介します。

※記事の内容は2023年9月29日時点の内容です。

宿場町・松戸の新たな文化継承・アーティストの滞在拠点に

このプロジェクトは、かつて宿場町として栄えた松戸の歴史や文化・伝統を踏まえた「一宿一芸」をコンセプトにしています。民間企業のCSRとして借り受けた旧ホテルの上層階をレジデンスとして活用するだけでなく、音楽や絵画、ファッションなどさまざまな芸術の創作に適したアトリエに転用しました。2016年からは一般社団法人PAIRを設立し、より活動を活発化させ、これまでに国内外636人のアーティストが創作活動を行いました。

PARADAISE AIRの廊下（撮影：加藤甫）

「PARADISE AIR」の利用は、約3週間滞在となるショートステイ、約3カ月の滞在となるロングステイ、スタジオプログラム（地元アーティスト、クリエイターのための貸しスタジオ）の3種類があり、ショートステイは毎年、ロングステイは隔年公募で滞在者を選定しています。ショートステイの場合、年間を通して常時毎月2～3組のアーティストが滞在し、創作活動だけでなくリサーチなどを通じて市民との交流を行います。ロングステイは、国際的な活動を目指すアーティストが対象となり2年に1度10月～12月に滞在。選定条件として「地域との対話が楽しめること」が含まれています。さらにスタジオプログラムは10組程度へ貸出・支援を行う中で、滞在アーティストと市民の交流や制作支援なども行う仕組みとなっています。

アーティストの制作風景（撮影：加藤甫）

公共空間を創作発表の場として活用

アーティストによる松戸の文化の情報発信、異文化交流以外にも、松戸市にクリエイティブシティというイメージを形成する狙いもあります。そのため、市内の公共空間（公園、団地、商業施設など）を制作発表の場所として提供しています。これまでも、松戸まちづくり会議と連携した松戸駅周辺での壁画制作や松戸競輪場イベントステージ背面壁画制作なども行ってきました。滞在アーティストの創作現場を目の当たりにできるだけでなく、完成した作品を日々の生活の中でも目にすることができることから、街の魅力向上にもつながっています。

アガタ・カザンセワ壁画公開制作時の様子（撮影：加藤甫）

10月から2組のアーティストが滞在予定

2023年10月からは、ロングステイで新たなアーティストが2組「PARADISE AIR」に滞在して、創作活動を行う予定です。

一組は、ユキ・ユンゲスブルトさん（ドイツ出身・ベルリン在住）で、写真、テキスト、インスタレーション、映像を使って、自身が興味を抱く「移り変わるもの」や「ハイブリッドなもの」の境界を探求します。これまでも美術的な方法だけでなく、メディア分析、人類学、社会学などの視点を組み合わせてリサーチや作品制作を行ってきており、松戸で出会う人や見つけた物事から思考を深めたいと期待しているそうで、約3カ月間の滞在制作でどんな作品をつくりあげるか注目です。

　もう一組は、韓国出身・ソウル在住のチョン・ヘジンさんとカン・ジョンアさんのユニット「手と顔」で、テキスト、映像、社会参加型パフォーマンスを得意とするアーティスト・ユニットです。今回は「母語を失うこと」「家にたどり着けないこと」などをテーマに作品を制作する予定です。その過程では市民参加型のワークショプを開いたり、自分たちの足で市内の様々な場所に訪れたいそうで、市民たちとの積極的な交流にも期待が高まります。

ユキ・ユンゲスブルトさん

ユニット「手と顔」

メディアの皆様には、PARADISE AIRイベントをぜひ取材いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

松戸市では、このプロジェクトをさらに活性化させ、より多くアーティストの創作活動を通じて、市民との交流を深めていきたいと考えております。そして、滞在アーティストに、松戸市の魅力を全世界に発信してもらうためにも引き続き魅力ある街づくりに取り組んでいきますので、このプロジェクトの進化にもご期待ください。

＜本年度のPARADISE AIRイベント予定＞
【LONGSTAY Program オープニングトーク】
日程：10月21日(土)
時間：14：00～15：30
場所：PARADISE AIR 5Fラウンジ
住所：松戸市本町15-4ハマトモビル5F
アクセス：JR・新京成線「松戸駅」西口より徒歩3分
参加方法：予約不要/英日逐次通訳あり
参加：無料
参加アーティスト：ユキ・ユンゲスブルト（ドイツ）、手と顔（チョン・ヘジン、カン・ジョンア/韓国）
※松戸市の芸術祭「科学と芸術の丘2023」と同時開催

 【SHORTSTAY Program滞在アーティストライブ・パフォーマンス】
日程：10月21日(土)
時間：16：30～17：20
場所：江戸川河川敷（樋野口排水機場地先、常夜灯付近）
参加方法：事前予約不要
参加アーティスト：ジェズ・ライリー・フレンチ（英国）、フィービー・ライリー・ロー（英国）
※「科学と芸術の丘2023」イベントRiver Night　Festivalの一環として実施

【LONGSTAYアーティスト市長表敬訪問】
日程：10月26日（木）
場所：新館5F市民サロン
時間：13：00～13：30
参加アーティスト：ユキ・ユンゲスブルト（ドイツ）、手と顔（チョン・ヘジン、カン・ジョンア/韓国）
参加者：本郷谷市長、石和田副市長、井之浦経済振興部審議監ほか

【LONGSTAYアーティスト報告会】
日程：12月2日（土）
場所：市民会館301会議室
時間：15：00～17：00
参加アーティスト：ユキ・ユンゲスブルト（ドイツ）、手と顔（チョン・ヘジン、カン・ジョンア/韓国）
ゲスト：小林エリカ(アーティスト)
　　　　長谷川新（インディペンデントキュレーター）