2020年9月30日 14:00

「雑談」が組織と仕事の生産性を左右する?常態化していくテレワーク実態調査 およそ6割が「テレワーク環境で『雑談』が生まれるきっかけない」、4人に3人が「仕事をするうえで『雑談』ができなくて困る

テレワークで宙に浮く職場の不安と情報不足を埋める双方向のコミュニケーションが協働のカギに

組織の実態や本音ベースで仕事の思いを語り合うまじめな雑談「オフサイトミーティング」を推奨してきた株式会社スコラ・コンサルト(本社:東京都品川区、代表取締役:辰巳和正)は、仕事の進行や人間関係の隙間を埋めている「組織の雑談」を焦点にした職場コミュニケーションの実態について、組織と仕事の関係に関心のあるビジネスマン230人を対象にアンケート調査を実施しました。

コロナ禍で働き方が大きく変わり、出社のオフィスワークからオンラインの在宅テレワークに仕事の場が移ったことで、職場のコミュニケーションにはどのような問題が生じているか調査結果を発表します。

■「テレワーク下の雑談」に関する実態調査

調査名称:「テレワーク下の雑談」に関する実態調査
調査期間:2020年7月6日~7月12日
調査対象:組織と仕事の関係に関心のある全国のビジネスマン
調査方法:インターネット調査
回答数:230人
 

調査の結果、テレワーク下では雑談がかなり減っていることがわかりました(1、2)。また、テレワーク体制に移行したことでこれまで気づかなかった雑談の機能や効果が明らかになり、雑談が果たしていた役割も見えてきました。雑談は、人やコトの状態把握や方向性のズレの修正、アイデア創出などに必要な定性的な情報をやりとりする手段であり、心理的にも、物理的にも人と仕事と組織をつないでいたようです(3、4)このような雑談の必要性を多くの人が認め、意図的に雑談の場が必要だと考えていることがわかりました()。

. 半数がテレワーク下で雑談していない

在宅のテレワークで、あなたは職場のメンバーと『雑談』をしましたか?」と聞いたところ、「ひんぱんにした」11.7%、「少しした」39.1%、「ほとんどしていない」28.3%、「あまりしていない」20.9%と回答を得ました(右図)。
「雑談をした群(「ひんぱんにした」、「少しした」と回答した人)」と「雑談をしていない群(「ほとんどしていない」、「あまりしていない」と回答した人)」を比較した結果、「雑談をした群」50.8%、「雑談をしていない群」が49.2%となり、約半数がテレワーク下で雑談をしていないと感じていることがわかりました。

2. 「雑談機会が減った」8割以上テレワーク下の「雑談のきっかけ」づくりに課題
続いて「出社時と比較して、職場のメンバーとの雑談機会は減りましたか?」と聞いたころ、「かなり減った」という回答が64.3%を占め、「増えた」3.0%、「あまり変わらない」12.2%「少し減った」20.4%でした(下図)。「かなり減った」、「少し減った」と回答した人を合わせると、雑談の機会が減っていると感じている人は8割以上に上ります。

また、「職場のメンバーを含む多くの人と対面で会えないテレワーク環境で、「雑談」が生まれるきっかけはありますか?」と尋ねたところ、「けっこうある」9.1%、「少しはある」31.3%、「ほとんどない」26.5%、「あまりない」33.0%と回答を得ました。「きっかけある群(「けっこうある」、「少しはある」と回答した人)」では40.4%、「きっかけない群(「ほとんどない」、「あまりない」と回答した人)」では59.6%となりました。およそ6割の人が雑談のきっかけがないと感じており、職場のメンバーが一緒に仕事をするオフィスであれば様子が気になって声を掛けたり、たまたま顔を見かけて立ち話をしたりと、自発的、偶発的に起こっていた雑談が、テレワーク下では生まれにくいことがうかがえます。
 

「きっかけある群」の人へ「何が、そのきっかけになりましたか?」と聞いたところ、「毎日行うオンライン朝会」や「週1回のグループミーティング」といったオンライン会議ツールを使って定期的なミーティングで顔を合わせる時や、「グループチャットを雑談の場にしている」や「雑談用の掲示板を活用している」といったチャットツールで雑談を意識している様子が見て取れます。また、「Web会議の開始前や終了後に少し雑談をする」や「雑談MTGを意図的に増やした」といった、意図的に雑談の時間を設けているという回答も目立ちました。

3. 雑談が減ることで、職場メンバー同士の不安感が高まる

続いて、「職場のメンバーとの「雑談」が減って不安に思うことはありますか?」と聞いたところ、「かなり不安」20.0%、「少し不安」49.6%、「ほとんど不安はない」8.7%、「あまり不安でない」21.7%と回答を得ました。「不安に思う群(「かなり不安」、「少し不安」と回答した人)」では69.6%、「不安はない群(「ほとんど不安はない」、あまり不安でない」と回答した人)」では30.4%となりました。職場のメンバーと雑談が減ることによって不安に思う人はおよそ7割に上ることがわかりました。では、どのようなことに不安を感じたのでしょうか。

 

​「不安に思う群」に「どんなことに不安を感じましたか?(複数回答)」と聞いたところ、一番多く選択された回答は「みんなの状況が分からない」28.5%、次いで「ちょっとした相談ができない」22.2%、「入ってくる情報が少ない」20.9%となりました(下図)
回答の多かった上位3項目から、これまで職場における雑談は、メンバー同士の状況や状態を確認することや、ちょっとした相談をするため、必要に応じて多様な情報収集をするためのコミュニケーションとして機能していたと考えられます。

4. 雑談が減ることで、仕事に支障が出る

雑談が減ることによる心理的な面では、不安が高まることがわかりました。では、雑談が減ることによって仕事上ではどのような影響があるのでしょうか。「仕事をするうえで「雑談」ができなくて困ることはありますか?」と聞いたところ、「かなりある」23.0%、「少しある」51.7%と、およそ75%の人が何らかの部分で困ると回答しています。「ほどんどない」は3.5%、「あまりない」は21.7%でした。

「かなりある」「少しある」と答えた人へ「それはどんなとき、どんなことですか?」と尋ねたところ、「相手の考え方や状況が見えないため、相談や業務を依頼するタイミングがつかめない」といった声や「対面でのコミュニケーションに比べ、オンラインツールや電話だと、ちょっとした確認や非公式での意見交換がしにくい」という意見が多くみられました。その他にも、「新しいアイデアの創出、発想の転換が出来ない」、「自ずと出来る情報共有が出来ず効率的にならない」、「業務上必要なこと以外話しさない、報告系のみで心が通じ合う感じが生まれない」などの回答がありました。

5. 職場で必要な話し合いの場
この先、在宅や出社、時短・時差などメンバーの働き方が多様になるとしたら、あなたは、日常的に職場でどんな話し合いの場があればいいと思いますか?」という質問に対しては下記のような回答をはじめ、多数の要望を込めた回答がありました。

・「ちょっとしたことを相談する会」
・「雑談に特化した話し合いの場、共通テーマで、かつゲーム感覚で話し合える場」
・「”チャットベースで雑談のフィールドを作ればよい。また週1~2でブレイクタイムと称したミーティングを行うのも面白いと思う」
・「近況報告や情報共有のための、仕事上での困りごとや上手くいったことなどを言い合える、堅苦しくない形でのチームミーティング」
・「メンバーの悩みを率直に吐き出せる、ぶつけられる場が必要。それが無いとメンタルの部分で耐えられないメンバーが出てきそうなので」

■調査結果を受けて (スコラ・コンサルト プロセスデザイナー 若山 修)

みんなが顔を合わせ、声をかけ合いながら仕事を進めていたオフィスワークが、個々に分散して仕事をする在宅テレワークに変わったら、職場や仕事には何が起こるのでしょうか。本アンケートでは、著しく支障が出ると言われる職場コミュニケーションの中でも、特に個別的で偶発性の高い「雑談」に焦点をあてています。
職場のメンバーが離れて仕事をするテレワーク体制で、会議やミーティングをはじめ日常のコミュニケーションがオンラインになってくると、企業の管理職やメンバーからさまざまな不安や悩みの声が上がり始めました。多くはコミュニケーション不足に由来する当面の悩みです。そこで、今までは無自覚だった「雑談」の存在が大きく浮上し、あらためて「雑談」という非公式なコミュニケーションの価値を再考する必要性を感じました。

※本調査における「雑談」は、あらたまった仕事の話とは無関係のざっくばらんな会話です。偶発的なとりとめのない話、何でもありのつれづれ話、モヤモヤと気になることなどちょっとした相談や思いつきの話、近況の世間話などを指します。
 

●特に大きな発見だったのは上記4の「雑談がなくなって困ること」の自由回答です。「困る」と回答したおよそ75%の内容の内訳をみると、多い順に以下のようになります。

本音・感情・ちょっとした困りごとの共有ができなくなる49%)
雑談から生まれるアイデアや気づきが得られなくなる25%)
方向性のすり合わせが難しくなること、その結果として発生する修正コスト24%)
通常業務や通常の部署の枠組みを超えたインフォーマルな相談がしにくい2%)

雑談が人間関係を円滑に進めるための情報収集や情報共有にひと役買っていることは経験的にもわかりますが、「困る」と回答した人のうち、4分の1もの人が方針のブレによる非効率を未然に防ぐ知恵として雑談を利用しているというのは意外でした。これは、日本のものづくりの大きな特徴であり、外国企業にはなかなかマネができない強みと言われる「すり合わせ技術」を彷彿とさせます。また、同じく4分の1が雑談を気づきやアイデア創出のための機会として利用していたことも新鮮な驚きでした。

上記5「この先の職場で必要な話し合いの場」についても興味深い結果となりました。雑談がなくなって不安に思うか、仕事に支障が出るかという質問に対して、「ほとんどない」「あまりない」という回答が一定数はあるものの、それも含めたほとんどの人が「ちょっとした、ざっくばらんな、気軽な」話し合いの場が必要だと回答しています。230名中、223名までが雑談、もしくは雑談に準ずる場の必要性を訴えているのです。

コロナ禍の非常事態宣言に伴い、オンラインミーティングのハード面は急速に整備され、数カ月のうちにオンラインでの話し合い方に関するリテラシーは形成されつつあるように思えます。次に私たちが考えなくてはならないのは、オンラインコミュニケーションを当たり前としながら、いかに雑談の果たす役割を明確にし、その機能を業務や職場のコミュニケーションに組み込んでいくか。さらには、あらためてオフライン(リアルな場)でなければ果たせない対面コミュニケーションの使い方をどう見定めていくか、ということでしょう。
 雑談の中身をみていくと、単にコンテンツの情報伝達とは異なる、双方向性の強い定性情報のコミュニケーションであることがわかります。コトにまつわる感情や思いなどの本音、表面化していない背景事情やプロセス、真偽・詳細などを確かめるための極めて自発的なやりとり、いわば非言語の要素をたくさん含んだ、双方向性・自発性の強いコミュニケーションなのです。

今後、テレワークスタイルが常態になっていくとするなら、「雑談」と言われる領域のコミュニケーションがもたらす以下のような効果、
◆人や仕事や組織の分断によって生じる不安を解消する
◆方向性や方針を共有して一体感をつくる
◆変わりゆくビジネス環境に対応して新しいものを生み出す創発が起こり続ける
これらを意図した「新しいコミュニケーションの様式」を獲得することが必須だと考えています。