2021年12月4日 10:00

認知症の方とご家族の負担軽減に向けて、 銀行での預金引き出しを円滑化する取り組みが始まります。

~神戸市と三井住友銀行・みなと銀行が10月に連携協定を締結、 年内にサービス開始予定~

 神戸市は、三井住友銀行とみなと銀行と2021年10月に連携協定を締結。認知症の方とご家族の負担軽減に向けて、銀行での預金引き出しを円滑化する取り組みのサービスを年内に開始する予定です。

 認知症等によって認知判断能力が低下すると、自身の銀行口座が使えなくなり、銀行窓口で預金の引き出しなどができなくなることがあります。この場合、法定後見制度(※)に基づく後見人などが預金の引き出しを行うこととされていますが、これらの制度をご存知ない方も多く、制度を利用していない方が医療費や生活費などを支払う必要性に迫られるケースが発生しています。
 このように、判断能力が低下した本人に代わってご家族が預金の引き出しや振り込みなどの取引を行うケースでは、銀行との協議や後見人の申立て手続きなどがご家族の負担になる場合があります。 

※法定後見制度…認知症や知的障害などにより判断能力が不十分な方を支援する成年後見制度のひとつ

・成年後見制度の普及やご家族の負担軽減を図り、高齢者や障害者の方およびそのご家族が安心して日常生活を送ることができるよう、神戸市は三井住友銀行、みなと銀行との間で連携協定を締結し、下記の取り組みを進めていきます。

全国初【1】銀行窓口での預金引き出しの円滑化によるご家族の負担軽減
   【2】自治体と銀行窓口が連携し、成年後見制度等の利用を促進
   【3】後見人の負担軽減等を目指した取り組みの推進

全国初【1】 銀行窓口での預金引き出しの円滑化によるご家族の負担軽減

・認知判断能力が低下し、家庭裁判所に後見人の申立てを行った場合、後見人が選任されるまでには時間がかかります。(書類作成から選任まで約3~4か月)
・この間、医療費や介護費などの費用が発生した場合には、やむなくご家族の方が代理で振り込み手続きを行うなどの突発的対応が必要になることがあります。
・後見人ではないご家族とこのような取引が必要になった場合、銀行ではこれまで、医師による診断書などをもとに本人の認知判断能力の有無を確認していましたが、今後は、本人の認知判断能力や身体機能を確認するための資料のひとつとして、「認知症神戸モデル」の認知症診断後に発行される「認知機能精密検査結果」を判断資料の1つとして活用することが可能になります。
・検査結果を活用することで、改めて医療機関を受診して診断書を取得する必要がなくなり、本人および家族の負担軽減や銀行での預金取引の円滑化が期待できます。

支援者(ケアマネージャー/障害者相談支援センター 職員)の声
・後見人等が決定するまでの間、身近な支援者に負担が集中する。
・頼れる親族がおらず、仕方なく現金を管理する場合もある。
・最終的には公的に位置づけられた制度の利用が必要だが、それまでの間、何らかの支援策を行政で検討してほしい。
銀行(窓口支店)の声
・できる限りお客様のご要望にお応えしたいが、出金に関するトラブルを避けるため、ご家族などの代理人に対して様々な方法で事実関係を確認させていただいているのが現状。
・必要な書類が1度で揃わない場合には、複数回ご来店いただくケースもあり、ご家の負担になっている。

年内開始【2】自治体と銀行窓口が連携し、成年後見制度等の利用を促進

認知症など金融取引に不安を感じる方が窓口に来られたら・・・

 ▶ 銀行から神戸市社会福祉協議会へつなぎます

銀行窓口から神戸市社会福祉協議会へその場で取り次ぎを行い、社会福祉協議会から支援制度の案内や後見人の申立て支援などを行うことで、支援制度の活用が必要な方の早期発見および支援につなげていきます。

▶ 神戸市社会福祉協議会から銀行へつなぎます

成年後見制度活用までの間、銀行の取引に配慮を要する場合は、神戸市が作成した相談情報シートを本人同意のもとで銀行へ提供し、銀行窓口および本人および家族の負担緩和を図ります。

年内開始【3】後見人の負担軽減等を目指した取り組みの推進

単身高齢者など身近に頼れるご家族がいない方に対して、成年後見制度をはじめとした支援制度の利用を促進するとともに、後見人となった方の負担軽減に向けた取り組みを進めます。

三井住友銀行

・後見人に選任された方は、判断能力が低下した本人に代わって財産を管理し、収入や支出の状況を裁判所に報告することが求められます。三井住友銀行では現在、これらによって生じる後見人の負担軽減を目指して、デジタル化やキャッシュレス決済機能を使った新たなサービスの開発を進めており、神戸市社会福祉協議会と連携して実証実験に取り組みます。

みなと銀行

・ご本人の将来を考えたときには、後見制度だけでなく、簡易な手続きで家族が預金の引出しなどを行うことができる信託制度の活用も有効なケースがあることから、神戸市社会福祉協議会の窓口に来られた相談者に対して、みなと銀行が取り扱う信託商品のご案内等の情報提供を行います。

神戸市(神戸市社会福祉協議会)

成年後見人などの第三者が高齢者等の財産を管理する場合の支援充実を図るため、神戸市社会福祉協議会が法人後見(※)等で培ったノウハウを活かして調査・研究に取り組みます。

※親族や弁護士、司法書士などの個人ではなく、社会福祉法人やNPOなどの法人が後見人になること

 協定の概要

[協定名称] 高齢者・障害者及びその家族の金銭管理における権利擁護に関する連携協定
[締 結 日] 令和3年10月1日
[締 結 先] 株式会社三井住友銀行、株式会社みなと銀行(神戸市と各銀行との2者協定)
[協定項目]
(1)高齢者及び障害者の支援及び情報連携に関すること
(2)単身の高齢者等の支援に関する調査・研究に関すること
(3)成年後見制度等の利用促進に関すること

背景:市民みんなで高齢者を見守るまち・神戸市  市民一人あたり年間400円 

  現在、認知症の方の人数は全国で約500万人いるとされ、団塊の世代がすべて75歳以上になる2025年には約700万人(65歳以上の高齢者の5人に1人)が認知症になると推測されています。また、知的・精神障害者の方の世話をしている親世代の高齢化に伴う認知能力や身体能力の低下、亡くなった後の親亡き後の子の生活維持に向けた支援が課題となっています。
 認知判断能力の低下は誰しも避けることができず、自らの今後の生活に事前に備える必要がありますが、考える機会や情報が不十分なまま時間が経過し、生活状況の変化などで深刻化してしまう事例が多くあります。
高齢者や親亡き後の障害者、およびそのご家族が安心して暮らし続けることができるよう、権利擁護を促進するとともに、ご家族の負担軽減を図るための取り組みが求められています。
 神戸市では、2018年に、「認知症の人にやさしいまちづくり条例」を制定し、認知症高齢者を社会全体で支えてくための取り組みとして「認知症神戸モデル」を推進するなど、高齢者や障害者の安心・安全な生活環境の充実に取り組んでいます。

[参考]全国初の取り組み「認知症神戸モデル」 ※平成31年度より開始
・認知症神戸モデルは、神戸市が全国で初めて実施した、認知症の早期診断を支援するとともに認知症の方が事故を起こした際の費用などを救済する施策。
・高齢者全員を対象とした早期診断支援や賠償保険、全市民を対象とした見舞金制度など、補償範囲の手厚さと広さが特徴。
・財源は、超過課税の導入(令和元年度から令和3年度に、1人あたり年間400円)により市民が広く負担。

診断助成制度(H31.1.28開始)

認知症の早期受診を推進するために、65歳以上の市民が2段階方式の診断を自己負担なく受診することができる制度①認知機能検診…身近な医療機関で認知症の疑いの有無を診る制度(無料)認知機能精密検査…①で認知症の疑いありの場合、専門医療機関で精密検査を受けらえる制度(検査にかかった費用は申請に基づき全額助成)

(広報紙KOBE 2021年10月号より)

事故救済制度(H31.4.1開始)

認知症と診断された方が事故を起こした場合に救済する制度見舞金制度…認知症の方が起こした事故等に遭われた方に見舞金を給付(最大3000万円、自動車事故は除く、事前登録不要)
<② 賠償責任保険…最高2億円の賠償責任保険の保険料を市が負担(事前登録制)
③ 24時間365日対応のコールセンター
④ GPS安心かかりつけサービス

広報紙KOBE 2021年10月号より)

※認知症神戸モデルの詳細についてはこちら→ https://kobe-ninchisho.jp/