2021年8月11日 10:00

神戸市の 不適正な土砂の埋立て処理等の防止に向けた条例 山間部と市街地が近接する立地を踏まえ令和2年度に制定

神戸市は、独自の条例(「神戸市土砂の埋立て等による不適正な処理の防止に関する条例」、以下「条例」)を令和2年11月から運用し、建設工事などで発生した土砂埋め立ての適切な管理に努めています。

 平成30年の西日本豪雨災害、令和3年7月の熱海市伊豆山地区での大雨に伴う土砂災害など、山間部に近接する市街地に土砂が流出する大規模な土砂災害が発生しています。
東西に約30km連なる六甲山系と市街地が隣接し、海岸から六甲山麓までの2~3kmの狭いエリアに人口が密集している神戸市は、これまで幾度も土砂災害に見舞われ、砂防堰堤(えんてい)の整備や六甲山系グリーンベルト事業をはじめとした土砂災害対策が行われてきました。

六甲山と神戸の街並み(現在)

近年は対策が進み、豪雨災害による死者・行方不明者数は過去の災害と比較して着実に減少しています。一方で、残土処分場の関わる土砂崩落事故の発生が熱海市での災害以前から全国で続いていることや、本市の特徴である都市部と山間部が近い地域でひとたび事故が発生すると市民生活等に甚大な影響が出ることから、これに対するさらなる取り組みとして、独自の条例(「神戸市土砂の埋立て等による不適正な処理の防止に関する条例」、以下「条例」)を令和2年11月から運用し、建設工事などで発生した土砂埋め立ての適切な管理に努めています。

■条例の特徴

1.災害発生に備えた保証金制度の創設
・大規模な土砂埋立て(50,000㎡以上※)について、安全対策に必要な工事費を事業者が事前に積み立てることを義務化 ※緑地の保全、育成区域の場合は25,000㎡以上

・大規模な土砂埋立てで不適正な処理が発生すると、周辺環境への影響が甚大なものになり、その是正には多額の費用が必要になるため、有事の際には事業者が積み立てた保証金を活用して迅速に市が行政代執行を行うことで、周辺環境への影響を食い止めることが目的。
・保証金は、埋立容量1立方メートルあたり1,100円(税込)を定期預金により預け入れ。

2.災害防止・安全確保のための積極的な監視の強化
・不適正な土砂搬入を防ぐため、土壌安全基準の適合や産業廃棄物の混入防止のための検査・報告や水質調査の実施・報告を義務化し、土地所有者に対する責任を明確化

・特定事業実施中、以下の実施を義務付け
  ◎ 事前の土砂搬入届提出に際し、土壌安全基準に適合していることを証する書面等の添付
  ◎ 搬入土砂の検査、報告(3か月ごと)
  ◎ 水質調査の実施、報告(4項目:毎月、全項目:年1回)等
・土地所有者に対して、施工状況の確認、不適正処理等確認時の市への通報等を義務化

■神戸市独自の条例により、不適正な土砂埋立て処理の防止に取り組む

・搬入される土砂への産業廃棄物の混入や申請以上の土砂搬入など、不適正な処理が行われているという情報を得るためには、従来は市民からの通報等によるしかなく、市が主体的にそのような情報を得ることは非常に困難でした。
・本条例では外部からの土砂の搬入を行う一定規模以上の土砂埋立てを許可制にし、廃棄物の混入状況の確認及び報告等を義務付けているほか、本市による立入検査権限を設けることで、本市が自ら不適正な処理が行われているという情報を把握することができます。
・本市として早期の対応が可能となる本条例の運用によって、生活環境や自然環境の保全、市民の安全・安心なくらしの確保を図っています。

六甲山と神戸の街並み(現在)

■条例の概要

【条例施行日】 令和2年11月1日
【主な内容】
1.土壌安全基準に適合しない土砂埋立て等の禁止
人の健康を保護し、生活環境及び自然環境を保全するうえで維持することが必要な土壌の安全に関する基準(27項目の土壌安全基準)を定めており、これに適合していない土砂を使用して埋立て等を行うことを禁止しています。(許可対象以外を含む)

2.特定事業の許可制
事業区域の面積が1,000㎡以上かつ高さ1m超の土砂埋立て(特定事業)を、5年を限度とした許可制(更新可)としています。また、環境影響調査の適用がない中規模(10,000㎡以上)の土砂埋立て事業に対する環境影響調査を導入しています。
<条例の対象となる土砂埋立て等(特定事業)>

埋立て 周辺の地盤面より低い地点を埋め立てること
盛土 周辺の地盤面より高くなるように土砂等を盛り、
水平な敷地をつくること
一時たい積 他の場所への搬出を目的として、周辺の地盤面
より高くなるように一時的に土砂を盛ること

※切土(傾斜のある土地を平坦にするため、削り取って地盤面を低くすること)は対象外

3.事業廃止及び完了時の措置等の実施
水質調査の実施・報告、災害防止措置、生活環境・自然環境の保全措置の実施を義務化

4.不適切処理発生時の措置等
①大規模な土砂埋立てにおける不適正処理に対する措置を行うための保証金制度の創設
②土砂搬入禁止区域の指定(土砂搬入が継続することにより周辺環境に影響が及ぶ場合)
5.その他
①必要な限度において、市が報告徴収、立入検査を行うことができることを規定
許可基準を遵守していない場合等には、特定事業の許可の取り消し、改善勧告、措置命令、公表等を行うことができることを規定
②勧告、命令等に従わない場合、懲役、罰金等の刑事罰

[参考] 神戸の土砂災害の歴史

昭和13年 阪神大水害】死者・行方不明者 695人
【昭和42年豪雨災害】死者・行方不明者 98人 【平成30年西日本豪雨】六甲山中における土砂崩落(死者・行方不明者なし)