2023年12月21日 15:00

優良工場表彰制度「第12回 2024 GOOD FACTORY賞」決定について ~ベトナム・日本の9工場を表彰~

 一般社団法人日本能率協会(JMA、会長:中村正己)は、日本およびアジア地域に進出している製造業の生産性や品質の向上、改善活動に成果をあげた工場を表彰する「GOOD FACTORY賞」を2011年に創設し、優秀事例を紹介する活動を行っています。
 このたび第12回の受賞企業として、旭化成、花王、東芝産業機器システム、トヨタ自動車、日産自動車、富士フイルムマニュファクチャリング、マツダ、リコー、リコーインダストリーの9社・9工場を決定いたしました。

 「GOOD FACTORY賞」は、中国・アジア地域並びに日本国内工場の生産性向上、品質向上など体質革新活動に取り組まれている事例に着目し、そのプロセスや成功要因、現場の知恵、働く方々の意識改革、社会的貢献などの内容を日本製造業の範として顕彰するものです。優良工場の事例を産業界に広く紹介することで、製造業の体質強化と発展に寄与することを目的としています。
 GOOD FACTORY賞審査委員会(委員長:東京工業大学 名誉教授 伊藤 謙治 氏)の書類審査・現地審査を経て、選考いたしました。

受賞企業(社名 五十音順)

受賞部門 

所在地

旭化成
ライフイノベーション事業本部
ロイカ事業部 ロイカ工場(プレミアムストレッチファイバー「ロイカ®」の製造販売)

ファクトリーマネジメント賞

日本(滋賀県)

花王
鹿島工場(主に衣料用洗剤等の家庭品用基剤、各種工業用製品、化粧品用の培養製品、食油製品/食品用基剤の製造)

ファクトリーマネジメント賞

日本(茨城県)

東芝
東芝産業機器システム 三重事業所(産業用モータ、変圧器、モータコントロ-ルセンタ、汎用インバ-タ及び車載モ-タ、及びこれらの部品等の開発/設計/製造)

ファクトリーマネジメント賞

日本(三重県)

トヨタ自動車
TOYOTA MOTOR VIETNAM CO.,LTD.(自動車製造)

ファクトリーマネジメント賞

ベトナム(ハノイ)

日産自動車
栃木工場(自動車製造および自動車部品製造)

ものづくりプロセス革新賞

日本(栃木)

富士フイルムマニュファクチャリング
竹松事業所(複写機・プリンターの消耗品を製造)

ものづくり人材育成貢献賞

日本(神奈川県)

マツダ
本社工場(自動車製造および自動車部品製造)

ものづくり人材育成貢献賞

日本(広島県)

 

受賞企業(社名 五十音順)

受賞部門 

所在地

リコー 
リコー環境事業開発センター(複合機本体・交換部品・消耗品のリユース/リサイクル)

ファクトリーマネジメント賞

日本(静岡県)

リコーインダストリー
東北事業所(商用印刷機、キーパーツ、サプライ(トナー)の生産)

ファクトリーマネジメント賞

日本(宮城県)

 

GOOD FACTORY賞は、各工場にて行われている改革活動とその成果を、「しくみ」「運営」「効果性」「マネジメントの基盤」の4つの視点から審査し、各部門で表彰いたします。

なお次回は、2024年1月より第13回の応募を開始し、2025年3月に受賞講演会を予定しています。

以上

【発表内容に関する問い合せ先】
一般社団法人日本能率協会 GOOD FACTORY賞事務局(担当:松本)
〒105-8522 東京都港区芝公園3-1-22 
TEL:03-3434-1410/E-mail:seisan@jma.or.jp
Webサイト:http://jma-goodfactory.com/ 

GOOD FACTORY」とは

1.賞の目的

 日本能率協会は1942年の設立以来、日本のものづくり力を強化すべく、企業研修や資格試験、シンポジウムなどさまざまな取り組みを実施してまいりました。2011年に、グローバルなものづくりを支援する公益目的事業として優良工場表彰制度「GOOD FACTORY賞」を創設しました。

 本賞は、日本および中国・アジア地域で、工場の生産性向上、品質向上をはじめさまざまな体質革新活動へ取り組まれている事例に着目し、そのプロセスや成功要因、現場の知恵、働く方々の意識改革、社会的貢献などの内容を幅広く取り上げ、その成果を日本製造業の範として顕彰するものです。

2.応募対象

中国・アジア地域に進出している日系現地企業・工場ならびに日本国内工場(日系現地企業の場合、日本企業の出資比率は概ね40%以上を想定)を応募対象とします。

3.受賞要件および受賞基準

応募されたテーマの活動およびその成果によって、工場・事業所が総合的に改善・強化されたり、地域・従業員との強い結びつきができるなどして、中国・アジア地域ならびに日本のものづくりの優秀なモデルとして他社の範となる工場・事業所を以下の4部門で表彰します。

 ■ものづくりプロセス革新賞:
IE(Industrial Engineering)改善、ITの適用、品質保証、工程改善、SCM(Supply Chain Management)改善、JIT(Just In Time)、調達革新、物流革新、自動化など、工場・事業所の“ものづくりプロセス”が、総合的に改善・強化されている事例

■ものづくり人材育成貢献賞:
全員参加の改善活動、技能伝承、能力開発への取り組み、従業員育成など、質の高いものづくりを実現するための“人材育成”に組織的に取り組まれている事例

■ものづくりCSR貢献賞:
環境対応、省エネ、福利厚生、地域社会との結びつきなど、ものづくりを側面から支える“CSR”(Corporate Social Responsibility)に積極的に取り組まれている事例

ファクトリーマネジメント賞:
上記3賞が表彰する個別内容ではなく、総合的に“工場運営”のレベルが高く、全体にバランスのとれた“工場運営”の良さ、といった事例

4.審査

審査委員会は、東京工業大学 名誉教授 伊藤 謙治 氏を委員長に、学識経験者、経営コンサルタントによって構成されます。受賞企業は書類審査・現地審査を通して決定し、応募企業には、審査所見をフィードバックします。
 一次審査(書類審査): 応募企業(事業所)から提出された受審資料に基づく審査
 二次審査(現地審査): 応募企業(事業所)の幹部・関係者との面接および事実確認
 最終審査 : 二次審査の結果を踏まえて、審査委員会で最終判定

5.審査の視点

審査は改善・改革活動の「しくみ」「運営」「効果性」「マネジメントの基盤」の4つの視点から行われます。対象となる活動がこの4つの視点全てを満たしているか、または特定の項目に優れているかを審査いたします。

一般社団法人日本能率協会「第12回 2024 GOOD FACTORY賞」 審査委員会

(敬称略)

委員長
東京工業大学 名誉教授 東京理科大学 経営学部 教授 伊藤 謙治

委 員
電気通信大学 名誉教授 キヤノンメディカルシステム株式会社 先端研究所所長
株式会社アイシン 社外取締役 新  誠一

日本大学 理工学部シニアリサーチフェロー 柿崎  隆夫

慶応義塾大学大学院 経営管理研究科 ビジネス・スクール 坂爪  裕

株式会社日本能率協会コンサルティング 取締役 シニアコンサルタント 石田 秀夫

株式会社日本能率協会コンサルティング シニアコンサルタント 石山 真実

Transformation Consulting合同会社 CEO Management Consultant 松田 将寿

一般社団法人日本能率協会第12回 2024 GOOD FACTORY賞」 授賞企業詳細

受賞企業(1)

企業名:旭化成株式会社
ライフイノベーション事業本部 ロイカ事業部 ロイカ工場
受賞部門:ファクトリーマネジメント賞
テ ー マ:「人」「データ」「組織風土」を柱としたスマートファクトリー化へのアプローチ

◆受賞理由
 旭化成株式会社のロイカ工場は、絶滅危惧種の淡水魚「ハリヨ」の生息域外保全活動および地域と協働でのトンボの保全活動等の環境活動に積極的な旭化成株式会社 守山製造所内(琵琶湖の南東、滋賀県守山市)に位置する。旭化成のグループミッションには、「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します」とあり、グループビジョンには“「健康で快適な生活」と「環境との共生」の実現を通して、社会に新たな価値を提供していきます”ということが企業の存在意義として示されている。
 このロイカ工場は、プレミアムストレッチファイバー「ロイカ®」供給のマザー工場と位置付けられており、同敷地内にある研究開発部門、生産技術部門も踏まえてマザー工場として製品・生産技術開発の中心となって、海外拠点支援も行っている。このようななか、昨今、ロイカの生産技術は操業50年に渡る累積的イノベーションも飽和状態に来ていると考えられ、今後も製品競争力を維持するにはスマートファクトリー化を通じた生産技術のさらなる高度化(データドリブン)へ取り組む必要があると認識された。このような考え方をベースに、今後のデータドリブンな生産技術強化を進めるべく体系的、段階的な革新・改善を進めていくための目標状態をスマートファクトリー成熟度という枠組みに置き換え、単純なデジタル置換にとどまらないよう組織運用能力開発=データを扱える運用体制づくり、運用する人の能力開発につながるように仕組み化して取り組んでいる。
 活動の特長として、成熟度診断を行い彼我の差を明確にし、データドリブン型に変革できるように全員の参加の意義明確化、組織体制の変革、ボトムアップの仕組み、サポートの仕組みなどへ展開している。また、コアツールをMicrosoft Power BIとし、その活用のための教育プログラムや教育ツールも自前で整備し、製造現場にとって欲しい可視化画面をそれぞれのメンバー自身が作り上げることができるようにプロジェクトの推進方法も含めて工夫が施された。これらにより、従業員のなかでデータドリブンとは何かが理解され、(技術レベル含め)やりたいことに応じて、安心かつ適切にデジタルツールを活用できる環境と教育が用意されている。従業員が自ら現場で活用し、改善させ、組織活性化につなげている一連の業務サイクルこそが、ロイカ工場のファクトリーマネジメントの特長と言える。

 具体的には以下の点が高く評価された。

1.人・データ・組織風土を柱とした工場マネジメントのスマート化
2.データ・ドリブン・アプローチによる工場の意思決定速度・質の向上
3.製造現場メンバー主体(自走)による可視化画面の開発・分析・活用による組織活性化

以上が、ファクトリーマネジメントとして評価される優良な活動として他社の見本となりうるものであり、GOOD FACTORY賞(ファクトリーマネジメント賞)の受賞に十分値する工場であると評価された点である。

《 事業所概要 (敬称略) 》
・主要事業:プレミアムストレッチファイバー「ロイカ®」の製造販売
・設立年月日:1931年5月21日(旭化成株式会社)
・従業員数:120名(ロイカ工場、2023年6月1日現在)
・所在地:〒524-0002 滋賀県守山市小島町692番地(ロイカ工場)
・代表者:旭化成株式会社 ライフイノベーション事業本部 ロイカ事業部
     ロイカ工場 工場長  藤原 豊

受賞企業(2)

企業名:花王株式会社 鹿島工場
受賞部門:ファクトリーマネジメント賞
テ ー マ:ストレスフリーオペレーションと心理的安全性を目指した取り組みと『社員の森』の活用

◆受賞理由

 花王 鹿島工場が本活動を始めたきっかけとして、従業員の年齢分布に関する今後の推移を見越し、創造革新グループの設置なども含めた独自の工場マネジメントを推進していることは興味深い。10年後には、ベテラン社員が減少し、経験の浅い若い従業員の比率が高まることを考えれば、生産工程においてはストレスフリー(Stress free) なオペレーションとなるように作業・職務を変革していく必要がある.そのため安全については特に文化的要素、すなわち心理的な側面を重視した安全文化の要因で言うところの権力的距離 (Power distance; 役職上位の人と一般職の人員との精神的・心理的な隔たり)を小さくしようという戦略(方針)など,社員の働き方改革を念頭に、さまざまな取り組みを行っていることはユニークであり、当工場のマネジメント上の大きな特徴と言える。
 同工場ではストレスフリーオペレーションに寄与する権力的距離削減のための基本的なアプローチとして、コミュニケーションの活性化、特に役職上位と一般職の間の双方向のコミュニケーション、そして全員参加の活動を促進するための仕組みを構築している。これらに関係するものとして、具体的には以下に示す取り組みや活動があり、いずれも同社の工場マネジメントの重要な点として評価に値するものである。

評価ポイントとして、
●ITシステムを活用した双方向のコミュニケーションの仕組み
ITの活用による双方向のコミュニケーションを実現した「改善提案システム」。これは生産性に関する通常の現場改善をさらに拡張し、安全、品質、作業効率、コストおよび環境など、多くの内容を対象にした活動となっている。

●生産活動の清流化を目指すための知見収集とコミュニケーションの仕組みと運用
生産現場で発生した生産・設備・品質のトラブルの発見など、情報共有に寄与する(これだけでなく、これらの問題に対する工場内の業務用SNSとしてのコミュニケーションツールの機能も持つ)「The GEMBA Knowledgeシステム」。

●製造メンバーの生の声をリアルに聞く仕組みと運用
現場の生の声を聞く仕組みである「ラウンドテーブル」、「鹿島なんでも相談窓口」、「安全団結時間」など。

●従業員が中心に行う歴史があり特徴あるESGに寄与する活動の推進
また、当工場が行っている ESG に対するさまざまな活動及び推進も、量・質とも非常に優れたものであり賞賛に値する。

 これらの内容は優良な活動で他社の参考になるものであり、GOOD FACTORY賞(ファクトリーマネジメント賞)の受賞に十分値する工場であると評価された。

《 事業所概要 (敬称略) 》
・主要事業: 主に衣料用洗剤等の家庭品用基剤、各種工業用製品、化粧品用の培養製品、食油製品/食品用基剤の製造
・設立年月日: 1980年5月1日
・従業員数: 313名 (2023年4月1日 現在)
・所在地: 〒314-0103茨城県神栖市東深芝20
・代表者: 花王株式会社 鹿島工場 工場長 羽木 久憲

受賞企業(3)
                      

企業名:東芝産業機器システム株式会社  三重事業所
受賞部門:ファクトリーマネジメント賞
テ ー マ:「TIPSmile!」笑顔で楽しく、安全・品質・生産性の向上をめざした魅せる事業所作り

◆受賞理由
 東芝産業機器システム(株)三重事業所は、1938年の操業開始以来、産業用・車載用モータ、変圧器、モータコントロールセンタ、汎用インバータ等の機器の設計、製造を行ってきた。その中で2014年、2015年と連続して発生した主力機器の品質不良、そして2018年の現場作業における災害の多発を契機に、より安全で、高い品質の製品を生産性高く製造する事業所を目指し、事業所全体での業務変革を推進してきた。また、そのための活動を推進する仕組みとして5S活動、SGA活動(注1)およびCFT活動の3重構造の体制を構築し、人材育成も含め全員参加で活動する仕組み、それこそが当事業所の特徴である。
さらに、CFT活動(注2)のチーム構成は、ライン部門(現業部門)である製造メンバーや製造技術者と、スタッフ部門のシステム、自動化、IE(注3)、現場改善ができるプロフェッショナルの双方が必ずプロジェクトメンバーとして参画するなど、密な定例会議を通じてチームを運営していくといった体制も、活動実施の信頼度や効率アップに大きく寄与している。
このようなマネジメントの方法をさまざまな活動に適用した結果として、安全問題発生後の2019年以降は災害件数が年間1~3件と減少し、品質問題に関しても品質保証費が大幅に減少するなど、大きな効果を上げている。
事業所での改善推進に縦横の組織や担当者からマネジメント層まで参画し、まさに従業員全体に浸透した一体感のある活動である。

具体的な評価ポイントとして、

1.全員参加でかつ人を育てる3重構造の改善活動体系(5S活動、SGA活動、CFT活動)による、トップダウンとボトムアップの融合
2.スタッフ部門と事業部門の連合型CFT活動
3.IoT、ロボット化、ダイバーシティなども含めた幅広い職場改善活動
4.単なる整理整頓だけではない、本物の5S活動
5.3重構造の活動体制を支える、人財育成、安全衛生活動、人財確保活動

これらの内容はどれも優良な活動で、他社の見本となるものであり、GOOD FACTORY賞(ファクトリーマネジメント賞)の受賞に十分値するものと評価された。

(注)「TIPSmile!」:英語社名の略称(TIPS)とSmile(笑顔)を組み合わせた全社活動の愛称
(注1)SGA:Small Group Activity(小集団活動)
(注2)CFT:Cross Functional Teamによる改善活動
(注3)IE:Industrial Engineering

《 事業所概要 (敬称略) 》
・主要事業: 産業用モータ、変圧器、モータコントロ-ルセンタ、汎用インバ-タ及び車載モ-タ、及びこれらの部品等の開発/設計/製造
・設立年月日: 1 938 年 3 月 28 日(設立当初は、芝浦製作所 三重工場)
・従業員数: 9 31 名 (2023年 3月末 時点)
・所在地: 〒510-8101 三重県三重郡朝日町縄生 2 121
・代表者: 東芝産業機器システム株式会社 常務取締役 生産統括責任者
      三重事業所 ゼネラルマネジャー 伊藤 渉

受賞企業(4)

企業名:TOYOTA MOTOR VIETNAM CO.,LTD.
受賞部門:ファクトリーマネジメント賞
テ ー マ:変化点に強く柔軟な車両工場を支える製造基盤強化術

◆受賞理由

 Toyota Motor Vietnam(TMV)では、急拡大するベトナム市場で、タクト変更や車種追加等の変化点が短期で頻発。同時に、品質を担保しお客様へ安定的にクルマをお届けすることが求められた。ここで製造基盤強化が急務となるが、複雑なマネジメントや高価機器を手段として用いず、地道な管理手法をシンプルに適用し、マネジメントシステムとして確立。(生産台数が少なく人件費が安価な為、高額投資が難しい中、工夫ある改善活動をローカルメンバーが高い自律レベルで推進)。
STM(タイ)からマネジメント手法である「三本柱活動(①標準作業の徹底と改定、②加工点マネジメント、③自主保全)」を学び、それをそのまま真似るのではなく自社工場にあうようアレンジ(車両工場は人作業がメインの為、加工点マネジメントと自主保全がなじみにくい)することで、実効ある活動推進を実施していた。具体的にアレンジとは、三本柱活動を成功させる仕組みを「5キードライバー(トップの強い思い、全員に時間を、やることが明確、現場で回す定期評価、やれば報われる)」として解き明かし、これらを文化になるまで推進された点は大変興味深い。
現場のマネジメントがまさに従業員全体に浸透した一体感のある活動であり、具体的には、以下の点が評価された。

・ローカルメンバー(管理職クラス)が中心となり、三本柱を学ぶ中で読み解いた「5キードライバー」を、活動を回す仕組みとして手順化、標準化し運用
・活動評価は幹部でなくグループ長クラスが行い、現場で納得するまで議論できる仕組みとなっている
・5Sを本活動の推進の基盤として活用し、5キードライバーによるマネジメントを浸透させた
・日本人スタッフはTA(テクニカルアドバイザー)という役職で、ローカルメンバーの支援に徹することで、ローカルメンバーの自律度は大変高い

これらの内容はどれも優良な活動で、他社の見本となるものであり、GOOD FACTORY賞(ファクトリーマネジメント賞)の受賞に十分値するものと評価された。

《 事業所概要 (敬称略) 》
・主要事業: 自動車製造
・設立年月日: 1995年 9月
・従業員数: 1611名
・所在地: ベトナム ハノイ市 ビンフック省
     Phuc Thang Ward, Phuc Yen City,Vinh Phuc Province.
・代表者: TOYOTA MOTOR VIETNAM CO.,LTD. President  仲野 敬太      

受賞企業(5)

企業名:日産自動車株式会社  栃木工場
受賞部門:ものづくりプロセス革新賞
テ ー マ:将来を見据えた、工場ものづくりプロセスの革新

◆受賞理由

 日産・栃木工場は、パワートレイン部品の生産と、高級車の車両生産を同一敷地内で行っている。
高級車を生産しているということから、同社の他の工場と比べても高い品質を維持し、先導的な工場として活動を行っている。高級SUV電気自動車「アリア」の生産開始を機に、さらに進んだ未来の工場作りを目指した生産工程に特徴があり、特に、次の2点は同工場の特徴的な点とし、
 1点目は、Nissan Intelligent Factory (NIF) の思想に基づいて自動化を進めてきた。ここでは、一般に工場での自動化ターゲットとなる、生産工程の自動化だけでなく、設備保全に対する予知保全、物流・搬送に対する自動化など、多方面にわたっていることが特徴とされる。
 2点目は、NIFを支える位置づけとして、TPM活動を幅広く、徹底して推進している点。これらは、通常行われている個々の生産現場での活動だけでなく、複数の製造課が連携した活動、間接部門を含む工場全体の活動としても展開していることが、よい取組みであると考える。RPAなど新技術も活用し業務の効率化を行うことで、上述のような高付加価値業務へ転換させていることもあわせて実施しており、このことも特徴といえる。
 このように、先端技術での自動化推進やデジタル化に偏ることなく、間接部門を含めた工場全体の現場力向上も強く意識した、底力のある活動が推進されていると評価した。具体的には以下の点を、高く評価した。

1.優れたものづくりシステムNIF(Nissan Intelligent Factory)と、それを支えるTPM活動の融合
2.NIFの思想に基づいて幅広い対象で自動化を推進
3.自動化推進にともなうTPMの進化、および、幅広い対象で改善活動の徹底推進
4.積極的にデジタル技術を活用した業務改善の推進で、高付加価値業務への転換

 これらの内容はどれも優良な活動で、他社の見本となるものであり、GOOD FACTORY賞(ものづくりプロセス革新賞)の受賞に十分値するものと評価された。

《 事業所概要 (敬称略) 》
・主要事業: 自動車製造および自動車部品製造
・設立年: 1968年
・従業員数: 約5,200名 (2022年9月1日時点)
・所在地: 〒329-0692 栃木県河内郡上三川町上蒲生2500
・代表者: 日産自動車株式会社 栃木工場 工場長  菊池 英司

受賞企業(6)

企業名:マツダ株式会社   本社工場
受賞部門:ものづくり人材育成貢献賞
テ ー マ:マツダ生産方式をベースとした、ものづくり力の追求と、最強の現場力人財づくり

◆受賞理由
 富士フイルムマニュファクチャリング株式会社 竹松事業所(以下 同事業所)は複写機・プリンタの消耗品を製造する工場である。同事業所は1968 年の操業開始以来、組織変更・事業統合・生産品移管等を経て、2010年に現在の事業体及び名称となり現在に至っている。
 その過程では順調に工場を運営・管理し、生産量も伸ばした上で、デミング賞をはじめ多くの表彰を受けた事業所である。しかしながら、2010 年前後から始まったペーパレス化やデジタル化の波に押され、本体の複写機やプリンタの減少とともに、その消耗品の製造を担当している同事業所の生産量も減少していった。この難局を乗り切るために、経営者・管理者と現場第一線のメンバーが一体となった改善活動を強力に推進していった。その活動を推進する中で“育成する・される”という風土が醸成され,人が成長してきたと考えられる。
 上述に加え、その「改善する人」が活躍する仕組みや取り組みとしては大きく3つが存在する。1つは「IPW(Innovation Production Way)」という改善をベースとした自社流の生産方式、2つ目はトップと従業員が心理的距離を縮める各種コミュニケーションの場と機会づくり、3つ目は現場の困りごとの改善をスタッフや技術、そしてR&Dと一緒に改善していくなどの部門横断活動がある。

以上,工場訪問の結果から,本事業所の人材育成活動の特徴であり強みのポイントとしては、

1.全員参加による改善活動(トップダウンとボトムアップの融合と一体活動による改善風土の形成)
2.個の成長(階層別の人材育成体系、納得行くまで話す個人目標の展開)
3.組織の成長(組織/個人目標の合意点を探り、個人/組織が共に目標達成)
4.未来をつかむ力(リサイクル拡大など新たな挑戦と部門横断の改善活動)
5.上記活動による自主的かつ自律的な組織文化の形成(従業員の「やりたい」を改善活動でカタチにする組織文化形成)

 上記5つのポイントから、同事業所では人が育つ文化・風土を形成され、これが個と組織が育つ仕組みと相まって、厳しい環境においても改善活動の中で着実に人・組織が育ち、その結果として事業競争力に結実してきたものと理解する。

これらの内容は,優良な活動として他社の参考になるものであり、同事業所はGOOD FACTORY賞(ものづくり人材育成賞)の受賞に十分値する工場であると評価された。

《 事業所概要 (敬称略) 》
・主要事業: 複写機・プリンターの消耗品を製造
・設立年月日:2010年1月29日
・従業員数:303名
・所在地:〒250-0111 神奈川県南足柄市竹松1600
・代表者:富士フイルムマニュファクチャリング株式会社 竹松事業所 所長 田外 太                                         

受賞企業(7)

企業名:マツダ株式会社   本社工場
受賞部門:ものづくり人材育成貢献賞
テ ー マ:マツダ生産方式をベースとした、ものづくり力の追求と、最強の現場力人財づくり

◆受賞理由
 マツダ株式会社本社工場は、1931年に操業開始し、激しい環境変化の中で生産物流領域の付加価値変化に対応していくために、ものづくり力を極め続け最強の現場力人財を持ち続けることを重要としている。1973年のオイルショック以降の経営危機を乗り越えるためにものづくりは、Mazda Production System(以下MPS)という形で1985年にまとめられ、職場の管理改善に取り組み、現場力と改善力のレベルアップを図っている。
 MPSの重要な概念は価値編成(人・物・設備が価値を生む動きのみで構成されたあらゆるロスが排除された状態)とジャストオンタイム(物・情報の流れが生産計画に同期して必要な時に必要な量だけ混流同期生産のラインに供給された状態)という二つである。その二つを実現させるのが人であり、人財育成が工場運営上の鍵となっている。この人中心の考え方はマツダが大切にするべき価値(人を深く知る、人と共に創る、飽くなき挑戦)としてブランド価値経営という形で浸透、企業風土になっている。
 MPS活動もこの人中心の考えに沿って行われてきており、その特徴として、(1)生産において企業体質の要は管理職と現場の接点である職長にあると定義し、職長活躍の最大化によりMPSをレベルアップさせるという点(2)人に焦点を当てるという考えそのものも企業価値観・企業風土に由来し、人を育てE Sを向上させることがC Sにどう繋がるのかを明確に描いている点(3)ビジネス効率概念で活動区分を明確にし、MPS、ストレート生産、ロス排除などの組み合わせを整理し推進している点(4)活動活性化面にも手をいれ、人を意識づける場を定義し場づくりへ反映している点(5)教育についても体系整理や時代の流れに合わせた取り組み(リモート、シニア・女性)も含め対話を重視する工夫をしている点(6)メダルや褒章のためのマイスターでなく革新を牽引するためのマイスターという位置付けで職場レベルアップ、現場革新活動を進めようとしている点などとして挙げることができる。

 これらは、実際の現場において以下がポイントとなり確実に運用されている。 

1.人間中心の工場人財育成の仕組み、教育体系
2.価値経営の職場への落とし込み
3.ものづくり革新コンセプトの具体的定義
4.人が活きる場づくり
5.人と職場の状態把握

 以上が、ものづくり人材育成貢献賞として評価される優良な活動として他社の見本となりうるものであり、GOOD FACTORY賞(ものづくり人材育成貢献賞)の受賞に十分値する工場であると評価された。

《 事業所概要 (敬称略) 》
・主要事業: 自動車製造および自動車部品製造
・設立年月日: 1931 年 3月
・従業員数: 7,580名
・所在地: 〒730-8670 広島県安芸郡府中町新地3-1
・代表者: マツダ株式会社 本社工場 工場長  宮脇 克典

受賞企業(8)

企業名:株式会社リコー  リコーデジタルプロダクツビジネスユニット OC事業本部
グローバルRRセンター
受賞部門:ファクトリーマネジメント賞
テ ー マ:リユース・リサイクル機能と新造生産機能を備えた複合型工場の取り組み

◆受賞理由
 リコー環境事業開発センターは、リコーグループにおける国内で唯一のリユース・リサイクルと新造機の複合型生産拠点となっている。SDGs、脱炭素化社会、循環型社会の実現が重要視されている今日において、リユース・リサイクルをビジネスの中心に添えた当事業所の取り組みは重要であり、かつ非常に興味深いものと考える。現実のビジネス・プロセスとしてリユース・リサイクルによる生産活動を行い、そこで発生する問題点や課題、ビジネスモデル、生産プロセスやその取り組みなどを目に見える形にまとめ明文化することは、これからリユース・リサイクルに取り組もうとしている企業や事業所にとっては大きな指針や支援となる。
 同社の安全文化に対する目標の設定、そしてその定期的な測定・評価といった重要な内容も含まれている。また、人財育成の1つの目標として「自律型人財」を取り上げ、その測定・評価方法や育成方法などを仕組化し、それを実践しているのも大きな特徴といえる。
 すなわち、脱炭素化・循環型社会という現代社会に対する要求に、製品のリユース・リサイクルというビジネスモデルを構築・実現していること、加えて安全文化という視点から安全にアプローチし、そのような組織を運営する人材として自律型人財の重要性に着目して実現していることなど、こうした活動が新たなファクトリーマネジメントのタイプを目指すものとして評価できると考えられる。

 具体的には以下の評価ポイントとして

1.製品のリユース・リサイクル工場運営に際して、安全第一を文化にまで昇華させる非正規社員も巻き込んだ活動推進
2.人財育成では、「自律型人財」の測定・評価方法、育成方法などを整備し推進
3.センターの運営では、サスティナビリティーを重視し具体的な数値目標を掲げ推進
4.リユース製品でも新造機同等の品質を満足させる、さらには新造機で活用できるレベルの回収製品リコンディショニング技術
5.回収製品の処理目標を設定した環境負荷低減活動

 これらの内容はどれも優良な活動で、他社の見本となるものであり、GOOD FACTORY賞(ファクトリーマネジメント賞)の受賞に十分値するものと評価された。

《 事業所概要 (敬称略) 》
・主要事業:複合機本体・交換部品・消耗品のリユース/リサイクル
・設立年月日: 2016年4月15日
・従業員数: 686人(2023年4月末)
・所在地: 〒412-0038 静岡県御殿場市駒門1丁目10
・代表者: 株式会社リコー リコーデジタルプロダクツビジネスユニット
     OC事業本部 OC生産センター
     所長 兼 グローバルRRセンター所長  鳥山 幸弘氏         

受賞企業(9)

企業名:リコーインダストリー株式会社  東北事業所
受賞部門:ファクトリーマネジメント賞
テ ー マ:たゆまぬKAIZEN活動は『有事』に活きる創業時から受継がれるものづくりDNA

◆受賞理由
 リコーインダストリー株式会社東北事業所は1967年東北リコーとして創業し、2013年リコーグループ国内の事業再編を経てリコーインダストリー東北事業所として現在を迎えている。
 2011年の東日本大震災など、度重なる困難を従業員の全員参加による「ものづくり力」により、乗り越えてきた事業所である。同社の生産活動は、『生産のリコーウェイ』(RICOH Way Production System)(RWP)に基づいた活動を推進している。
 RWPで唱える「12の基礎」をベースに、『防災』、『働きやすさ』、『KAIZEN活動』、『生産革新(デジタルマニュファクチャリング)』、『自律型人財の育成』をトップダウンとボトムアップの双方から取り組んでいる所が特徴である。

評価のポイントとして、

・工場マネジメントの構造が明確で、良い「形(カタ)」が出来ている
RWPの「12の基礎」を軸として生産活動で大切にすべきことを明確にしており、工場のマネジメントを実践している

・新しい5Sアプローチ
事業所を横断した間接職場の5Sレベルの向上(BIG SMILEチーム)活動展開。事業所で働く社員が明るく楽しく働きやすい職場環境づくりを行っている

・学び合いを重視したKAIZEN活動とその成果の創出
ラウンドテーブル方式による発表者・聴講者双方の学びあいの場つくりを設定し、SQCDと人財育成の内容が「見える化」され、高い業務成果を確実に出している

・デジタルマニュファクチャリング(DM)実践による生産革新活動
デジタル化を行い「見える化」を推進しつつ、改善など現場力を引きだす仕組みづくりとその実践を行っている

・現場が主体になった自律的活動の展開
『防災』、『働きやすさ』、『KAIZEN活動』、『生産革新』、『自律型人財の育成』を現場主体で推進している

・現場を活性させ、現場を動かすための仕組みと仕掛けの構築
働きやすさ指標、39Project(サンキュープロジェクト)など、間接部門も入ったユニークな活動を推進している
 これらの内容はどれも優良な活動で、他社の見本となるものであり、GOOD FACTORY賞(ファクトリーマネジメント賞)の受賞に十分値する工場であると評価された

《 事業所概要 (敬称略) 》
・主要事業: 商用印刷機、キーパーツ、サプライ(トナー)の生産
・創業開始: 2013年4月
・従業員数: 1,283名
・所在地: 〒989-1612  宮城県柴田郡柴田町中名生神明堂 3−1
・代表者: リコーインダストリー株式会社 東北事業所  事業所長 庄司 勝