2022年12月7日 13:00

『トップマネジメント意識調査2022』<調査結果発表>これからの経営者に求められる資質の第1位は「本質を見抜く力」

経営者となるためのトレーニングをこれまで「受けていない」との回答が6割を超える

 一般社団法人日本能率協会(会長:中村正己、JMA)は、社会や経営環境の変化が激しい時代において、組織の先頭に立って変革を牽引していく経営者として認識すべき経営課題や、これからの経営者に求められる要件、経営者・役員のためのトレーニングのあり方等を明らかにすることを目的に、JMAが開催している役員・経営幹部向け研修プログラムの受講者を対象として、『トップマネジメント意識調査2022』を実施しました。
※JMAでは、役員・経営幹部の方々を対象としたトップマネジメント研修プログラムを1982年から40年間にわたって開催。これまで10,000名を超える方々にご参加いただいています。

<調査結果のポイント>

※詳細は下記以降をご参照ください。添付資料のP8に調査結果に対するコメントを掲載しています。

1.これからの経営者に求められる資質の第1位は「本質を見抜く力」。次いで、第2位「変化への柔軟性」、第3位「イノベーションの気概」が挙げられた。

2.現在の役職への就任を打診された時点で「準備ができていた」との回答は4割に留まる。
もっと身につけておけば良かったと思う知識やスキルの第1位は「会社法・税法などに関する法律知識」、第2位は「財務・会計に関する知識」。

3.経営者となるためのトレーニングをこれまでに「受けていない」との回答が6割を超える。
受けたことのあるトレーニング機会の第1位は、「社外の経営幹部育成研修の受講」。

4.経営戦略への影響が想定される項目として関心の高いもの:第1位「デジタル技術の活用、DXの推進」、第2位:「人的資本経営の推進、組織能力・人材の強化」、第3位「テクノロジー動向の把握と対処」。日本の産業界の今後の競争力・持続的成長に「不安がある」との回答が9割に達している。

5.卓越した経営者であると思われる人物:第1位 稲盛和夫氏、第2位 松下幸之助氏、第3位 本田宗一郎氏、第4位 スティーブ・ジョブズ氏、第5位 渋沢栄一氏。

■ 「トップマネジメント意識調査2022」実施概要

調査期間 2022年7月14日(木)~10月26日(水)
調査対象 上記期間内に開催したJMAのトップマネジメント研修の受講者
調査方法 質問紙法(研修初日に配布し、終了時に回収。オンライン参加者は後日メールにより提出)
回答数 278名 (回答者の概要は9ページに記載)

【本件に関するお問合せ先】
一般社団法人日本能率協会 経営・人材革新センター 組織・人材開発グループ (担当:近田(こんだ))
〒105-8522 東京都港区芝公園3-1-22 TEL:03-3434-1955 E-mail:JTOP@jma.or.jp
※取材のお問合せは、広報・マーケティング室(担当:綿貫、TEL:03-3434‐8620または090-6510-9161 E-mail:jmapr@jma.or.jp)へお願いいたします。

1.これからの経営者に求められる資質の第1位は「本質を見抜く力」。
次いで、第2位「変化への柔軟性」、第3位「イノベーションの気概」が挙げられた。

○ これからの経営者に求められる資質として28項目を提示し、特に重要であると思われるもの、自身の強みであると思われるものにつき、それぞれ3つを選択していただきました。

○ 結果、【図1-①】のとおり、特に重要であると思われる資質の第1位は「本質を見抜く力」(41.4%)、第2位は「変化への柔軟性」(37.4%)、第3位は「イノベーションの気概」(24.8%)となりました。

○ VUCAとも言われる変化の激しい時代にあって、これからの経営者には、本質を見抜いて、変化に柔軟に適応し、イノベーションを実行していく気概が重要であると考えられているようです。

○ 一方で、自身の強みであると思う項目についての回答結果と比較すると、「変化への柔軟性」は強みであるとの比率が34.5%と重要度と同水準であるのに対し、「本質を見抜く力」と「イノベーションの気概」はそれぞれ18.7%、9.4%と、重要度との乖離が大きいことが分かります。

○ また、重要度において第5位(20.5%)となっている「ビジョンを掲げる力」についても、強みであるとの比率は6.1%となっており、ギャップが見られます。これからの経営者を育成していくにあたって、こうした資質をより一層強化していくことが必要であると捉えることができます。

○ 全28項目の結果については、【図1-②】をご参照ください。

【図1-①】 これからの経営者に求められる資質として、特に重要であると思うもの/自身の強みであると思うもの(上位10項目)(3つまで選択)

【図1-②】 これからの経営者に求められる資質として、特に重要であると思うもの/自身の強みであると思うもの(全項目)(3つまで選択)

2.現在の役職への就任を打診された時点で「準備ができていた」との回答は4割に留まる。もっと身につけておけば良かったと思う知識やスキルの第1位は「会社法・税法などに関する法律知識」、第2位は「財務・会計に関する知識」。

○ 現在の役職への就任を打診された時点で、その職務の遂行に必要なスキルやマインド等の準備ができていたかどうかを尋ねたところ、「準備ができていた」との回答は4割に留まりました(「十分に」「ある程度」の合計)。一方、「準備できていなかった」は3割を超えています(「まったく」「あまり」の合計)。【図2-①】

○ また、経営者として必要と思われる知識やスキルに関して、既に身につけているもの、就任前にもっと身につけておけば良かったものを尋ねたところ、もっと身につけておけば良かった知識やスキルの第1位は「会社法・税法などに関する法律知識」(71.6%)、第2位は「財務・会計に関する知識」(69.1%)となりました。既に身につけているとの回答比率は、それぞれ11.9%、19.8%となっており、乖離が大きいことも分かります。【図2-②】

○ 経営幹部候補を計画的に育成し、役員・経営幹部として必須の経営知識を習得する機会を用意することが重要となっていることがうかがえます。

【図2-①】 現在の役職への就任を打診された時点で、必要なスキルやマインド等の準備ができていたか

【図2-②】 経営者に必要な知識やスキルとして、既に身につけているもの/もっと身につけておけば良かったもの

3.経営者となるためのトレーニングをこれまでに「受けていない」との回答が6割を超える。受けたことのあるトレーニング機会の第1位は「社外の経営幹部育成研修の受講」。

これまでに経営者となるためのトレーニングを受けたことがあるかどうかを尋ねたところ、「受けてきた」との回答が4割を下回っているのに対し、「受けていない」が6割を超えるという結果が見られました。【図3-①】

○ また、上記設問で「まったく受けていない」と回答した人以外に、これまでに受けたことのあるトレーニング機会を尋ねたところ、第1位は「社外の経営幹部育成研修の受講」(52.3%)、第2位は「戦略・ビジョン策定プロジェクトへの参加」(50.6%)、第3位は「社内の経営幹部育成研修の受講」(49.4%)となりました。【図3-②】

○ コーポレートガバナンス・コードにおいて、役員に対するトレーニング機会の提供が要請されていますが、研修やタフ・アサイン(いわゆる修羅場経験)など、経営者育成の体系的な整備が必要であることが分かります。

【図3-①】 これまでに経営者となるためのトレーニングを受けてきたか

【図3-②】 これまでに受けたことのある経営者となるためのトレーニング機会(複数回答)

4.経営戦略への影響が想定される項目として関心が高いもの:第1位「デジタル技術の活用、DXの推進」、第2位「人的資本経営の推進、組織能力・人材の強化」、第3位「テクノロジー動向の把握と対処」。日本の産業界の今後の競争力・持続的成長に「不安がある」との回答が9割に達する。

今後の経営戦略に影響すると想定される項目についての関心度合いを尋ねたところ、「大いに関心がある」との回答率の高い第1位は「デジタル技術の活用、DXの推進」、第2位「人的資本経営の推進、組織能力・人材の強化」、第3位「テクノロジー動向の把握と対処」となりました。【図4-①】

○ また、日本の産業界の今後の国際競争力・持続的成長、ならびに、自社の今後の競争力・成長に対する評価を尋ねたところ、日本の産業界の今後の国際競争力・持続的成長については、「不安である」の合計(「やや」~「かなり」)が9割に達しました。自社の今後の競争力・成長についても、「不安である」の合計が5割を上回っています。【図4-②】

○ 経営課題が複雑・多様化する時代にあって、これからの役員・経営幹部には、自社の競争力向上、成長に向かって果敢に挑戦することが、一層期待されていると言えるでしょう。

【図4-①】 今後の経営戦略に影響すると想定される項目についての関心度合い

【図4-②】 日本の産業界の今後の国際競争力・持続的成長/自社の今後の成長や競争力への自信

5.卓越した経営者であると思われる人物:第1位 稲盛和夫氏、第2位 松下幸之助氏、第3位 本田宗一郎氏、第4位 スティーブ・ジョブズ氏、第5位 渋沢栄一氏

もっとも卓越した経営者であると思う人物1名を挙げていただいたところ、第1位に稲盛和夫氏(50票)第2位に松下幸之助氏(44票)が挙げられました。次いで、第3位 本田宗一郎氏(14票)、第4位 スティーブ・ジョブズ氏(13票)、第5位 渋沢栄一氏(11票)となっています。

【図5】 卓越した経営者であると思われる人物(上位10人)

調査結果を受けてのコメント

一般社団法人日本能率協会
経営研究主幹 曽根原 幹人
(新任執行役員セミナー コーディネータ)

〇今回は、日本能率協会が実施しているトップマネジメント研修プログラムの受講者を対象に実施した意識調査の結果をご紹介しました。

〇ご覧の通り、調査結果から、経営者となるためのトレーニングを受けていない方が多数となっていること、特に、法務や財務・会計など、経営に必須の知識の習得が不足していると、役員・経営幹部自身が感じていることが浮き彫りとなりました。

〇とりわけ上場企業には、コーポレートガバナンス・コードにおいて、各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したいわゆるスキル・マトリックスを開示することや、役員を対象としたトレーニング機会を提供することが要請されていますが、企業の競争力や価値創造力の向上に向けて、こうした取り組みを一層強化していくことが急務となっていることが確認できたと思います。

〇また、経営戦略への影響が想定される項目として、デジタル技術の活用やデジタル・トランスフォーメーション(DX)、あるいは人的資本経営の推進、テクノロジーの動向と把握といったことについて、大きな関心が示されていることも興味深い結果です。

〇これからの経営者に求められる資質として、「本質を見抜く力」「変化への柔軟性」「イノベーションの気概」が上位に挙げられていることと照らし合わせて考えると、大局観をもって、変化に果敢に挑戦する経営者の育成が、これまで以上に求められているとも言えるでしょう。

〇日本能率協会では、トップマネジメント研修を1982年から開催し、これまでに10,000人以上の方々にご参加をいただいています。役員・経営幹部としてのマインドや行動の変容、必須の経営知識の習得に向けて、今後もこうした事業活動を強化してまいります。

【JMAトップマネジメント研修プログラムとは】

「役員いかにあるべきか」をテーマにした、役員・経営幹部を対象とした研修プログラム。新任の役員を対象として、経営者・役員としての意識を醸成し、行動変革を促すプログラムであるJTS(JMA Top Management Seminar)と、経営者に必須の実践的知識を習得するCDP(Company Direction Program)の2つのプログラム群、合わせて11のセミナーで構成されています。

https://jma-top.com/

■JTS(JMA Top Management Seminar)

◇新任取締役セミナー
◇ 新任執行役員セミナー
◇ 経営者・関係会社トップのための新任社長セミナー
◇ 既任役員のための経営革新セミナー
◇ 新任監査役・監査(等)委員セミナー

■CDP(Company Direction Program)

◇法務・企業統治セミナー
◇ 経営戦略セミナー
◇ 戦略財務・会計セミナー
◇ 組織・人材戦略セミナー
◇ 意思決定とリーダーシップセミナー
◇ 経営リテラシー集中セミナー

回答者の概要

■ 所属企業の業種

■所属企業の従業員数

■ 所属企業の上場区分

■ 回答者の役職

■ 回答者の年齢

■詳細プレスリリースはこちらからダウンロード可能です。
https://prtimes.jp/a/?f=d16501-20221206-935934b278dfa3ae13dc714672505042.pdf