2023年2月24日 10:00

世界最大手の半導体受託製造企業 TSMC社の新工場建設発表から約1年 「シリコンアイランド九州」復活に向けて 半導体関連産業の集積で変化する熊本県

台湾との連携強化や関連人材育成、文化共生から教育環境整備まで 県のポテンシャル最大化に向けて日々進行中

 半導体受託製造世界最大手の台湾企業TSMCが熊本県に日本初の工場建設を発表して約1年が経過しました。熊本県では半導体産業集積強化推進本部を設置し、受け入れ環境整備などを進めています。  

 世界的に半導体不足が叫ばれる今、熊本県は半導体の安定供給を通して日本経済の安全保障の一翼を担うため、「シリコンアイランド九州」の復活を目指しています。まだまだ発展途上の段階ですが、TSMC進出で変わりつつある現在の熊本の状況をご紹介します。

【熊本県への半導体関連企業誘致件数が過去最高を記録】

 熊本県の企業誘致件数は近年増加しており、中でも半導体関連企業の誘致件数は2021年度には過去最高の22件となりました。TSMC進出の発表以降は25件の立地協定を締結するなど、県内の半導体関連企業の集積が進みつつあります。

【くまもと半導体産業推進ビジョンの策定と台湾企業との連携強化】

 TSMCの熊本進出を契機に、半導体産業をはじめとした県内産業のさらなる復興と県下全域における県経済の成長を実現するため、「くまもと半導体産業推進ビジョン」を2023年3月に策定する予定です。
 台湾企業との連携においては、2022年9月に台湾で開催された半導体関連の国際的なビジネスイベント「セミコン台湾」に熊本県として出展し、県の半導体関連産業集積に向けた取り組みのPRを行いました。
また、2023年1月には知事と経済団体を中心としたメンバーで台湾を訪問し、熊本の魅力発信やビジネス交流拡大を図りました。


「セミコン台湾」でのPRの様子

※台湾訪問の詳細については、2023年1月25日発行のレターを参照ください。

【熊本県内における半導体関連の人材育成について】 

 県内の半導体産業のさらなる人材需要に備えるため、熊本県では県内企業や大学、高専、高校等と連携し、県内の半導体産業をリードする人材育成に取り組んでいます。2022年3月に「第1回熊本県半導体人材育成会議」を開催。
 熊本大学はデジタル技術と半導体に携わることのできる人材を育成する「情報融合学環(仮称)」及び「工学部半導体デバイス工学課程(仮称)」を2024年度に設置することを発表しました。また、熊本県立技術短期大学校でも、2024年度の半導体関連の新学科設置に向けて準備を進めています。


「第1回熊本県半導体人材育成会議」

【様々な国の人たちと暮らしをともにする多文化共生と教育環境の整備】

 熊本県では、地域住民と外国人の方々との相互理解を深める場所として、市町村による交流型の日本語教室の開設を支援し、外国籍の子どもたちが楽しく学校生活を送ることができるよう、教育環境の整備に取り組んでいます。
 県内のインターナショナルスクールや私立学校では、TSMCの進出に伴い来熊された外国籍の子どもたちの受け入れを開始しました。2023年3月には公立学校でも受け入れを開始する予定です。
 また、外国人に選ばれる企業の育成を図ることを目的に「外国人受け入れのための異文化理解・やさしい日本語講座」を開講し、2022年度には県内の5地域で合計10回の講座を実施しました。

【環境保全の取り組み】

 熊本県菊陽町に工場を建設中のJASMは、使用した地下水量をかん養する方針としており、また、稼働開始時に再生可能エネルギーを100%使用すると発表しました。
熊本県では、地下水保全について、今後の半導体関連企業の集積を見据え、水田湛水による地下水かん養に加え、雨水浸透ますの設置や、地下水のみに頼らない河川等の未利用水の利活用など、様々な対策を検討しています。
 さらに、熊本県では産業の発展と環境保全の両立に向け、再生可能エネルギーの導入推進、排水・排ガスの規制などの取り組みも進めます。

水田湛水による地下水かん養の様子

【くまモンがCPO(プロモーション最高責任者)に就任】

 2022年7月25日に開催された第3回半導体産業集積強化推進本部会議において、くまモンがCPO(プロモーション最高責任者)に就任しました。 現在、くまモンをフックに半導体産業集積強化を契機とした熊本のプロモーションを展開しています。
 また、半導体産業集積強化を契機とした熊本PRのシンボルとして、「シリコンアイランド九州の復活」を祈念した特別なシンボルマークを制作しました。
 くまモンが「熊本から世界へ」を意味する前置詞の「TO」を持っており、熊本と世界をつなぐ架け橋の役割を担っていることを表現しています。ベースカラーは、継続性を意味する橙色(だいだいいろ)とし、熊本の発展に向けた願いを込めています。