2022年11月17日 14:00

『日本企業の経営課題2022』調査結果速報【第3弾】カーボンニュートラルの取り組みは、大手企業では8割超に達する 取り組み課題として「利益確保・拡大と環境性の両立が難しいこと」が4割

 一般社団法人日本能率協会(会長:中村正己、JMA)は、企業が抱える経営課題を明らかにし、これからの経営指針となるテーマや施策の方向性を探ることを目的に、1979年から、企業経営者を対象に、「当面する企業経営課題に関する調査」を実施しています。

今年は2022年7~8月に調査を実施し、689社からの回答を得ました。今回は第3弾として、各社におけるカーボンニュートラルに向けた取り組み状況と課題について、ご報告します。

詳細プレスリリースをご入用の場合は、お問合せをお願いします。

1.半数以上の企業がカーボンニュートラルの取り組みに着手。大企業では8割超に達する
2.8割の企業が進捗について「計画通りに進捗している」「ほぼ計画通りに進捗している」と多数
3.カーボンニュートラルは経営課題と連動。製造業では45%が重要課題として位置付け
4.取り組み課題として、「利益確保・拡大と環境性の両立が難しいこと」が4割

詳細な調査報告書は12月に公表予定です。

  • 2022年度(第43回)当面する企業経営課題に関する調査」概要

調査時期

2022年722日~819

調査対象

JMAの法人会員ならびに評議員会社、およびサンプル抽出した全国主要企業の経営者
(計5,000社)

調査方法

郵送調査法(質問票を郵送配布し、郵送およびインターネットにより回答)

回答数・回収率

回答数689社・回答率13.8% (回答企業の概要は8ページに記載)

 ※ 調査データを引用する際は、出典名(一般社団法人日本能率協会「日本企業の経営課題2022」)を明記してください。

1.半数以上の企業がカーボンニュートラルの取り組みに着手 大企業では8割超に達する

〇各社におけるカーボンニュートラルへの取り組み状況について尋ねたところ、【図1】のとおり、全体では「取り組んでいる」企業が5%と半数以上となりました。

〇従業員規模別に見ると、大企業では5%、中堅企業でも58.0%が着手しています。中小企業では、取り組みを始めている企業は31.8%に留まるうえ、「取り組み・検討ともなし」が20.9%と、企業規模による差がはっきりと見受けられます。

  • 〇業種別でみると、製造業は4%が取り組みを始めているが、非製造業は46.4%20ポイント程度の差があり、業種による傾向差も見てとれます。
  • 【図1】  カーボンニュートラルへの取り組み状況 

    本調査では、
    大企業 :従業員数3,000人以上
    中堅企業:従業員数300人以上~3,000人未満
    中小企業:従業員数300人未満
    と区分しています。

 

28割の企業が進捗について「計画通りに進捗している」「ほぼ計画通りに進捗している」と多数

〇カーボンニュートラルに取り組んでいると回答した企業(n=376)に対して、取り組みの進捗状況を尋ねたところ、【図2】のとおり、「計画通りに進捗している」が8%、「ほぼ計画通りに進捗している」が63.3%となっており、「計画通りに進捗している」と「ほぼ計画通りに進捗している」の合計は、8割となりました。

  • 〇企業規模別でみると、大企業は「計画通り」が3割、「ほぼ計画通り」が6割と全体では9割が計画通りに進捗しているが、中堅企業(「計画通り」2%、「ほぼ計画通り」65.9%)、中小企業(「計画通り」11.0%、「ほぼ計画通り」63.0%)と、企業規模が小さくなるほど計画通りには進捗していない実態が見てとれます。

 

【図2】  カーボンニュートラル取り組み計画の進捗状況

 

本調査では、
大企業 :従業員数3,000人以上
中堅企業:従業員数300人以上~3,000人未満
中小企業:従業員数300人未満
と区分しています。

 3.カーボンニュートラルは経営課題と連動。製造業では45%が重要課題として位置付け

〇経営課題のなかでのカーボンニュートラルの位置付けについて尋ねました。全体では、【図3】のとおり、「重要課題として位置付けている」が9%、「取り組むべき課題として位置付けている」が33.8%と、経営課題と連動している企業が多数であることがわかりました。

  • 〇企業規模別でみると、大企業では、「経営課題には連動していない」が7%とごくわずかで、ほとんどの企業が

カーボンニュートラルを何らかの形で課題として位置付けていることがわかりますが、中堅、中小と企業規模が小さくなるにつれ、「重要課題」の比率が減少し、「今後の検討課題」「経営課題には連動していない」が増加しています。

  • 〇業種別でみると、製造業では0%がカーボンニュートラルを重要課題として位置付けているものの、非製造業では21.3%に留まっています。業種としての関連度の差が、明確にあらわれている結果となりました。

 

【図3】  経営課題のなかでのカーボンニュートラルの位置付け

 

本調査では、
大企業 :従業員数3,000人以上
中堅企業:従業員数300人以上~3,000人未満
中小企業:従業員数300人未満
と区分しています。

  

4.取り組み課題として、「利益確保・拡大と環境性の両立が難しいこと」が4

〇カーボンニュートラルの取り組みの課題を尋ねたところ、【図4-1】のとおり、「利益確保・拡大と環境性の両立が難しいこと」の比率が最も高い結果となりました。他に、「担当する人材が不足していること」「取り組むための情報・知識が不足していること」もそれぞれ4割前後で、多くの企業において課題と捉えられていることがわかります。

  • 〇企業規模別でみると、大企業は特に「利益確保・拡大と環境性の両立が難しいこと」「顧客や取引先を巻き込んだ取り組みができていないこと」、中堅企業は「担当する人材が不足していること」「取り組むための情報・知識が不足していること」が全体と比較して比率が高く、大企業は取り組みにおける具体的な方法、中堅・中小企業は知識や人材不足を課題と感じていることが見えてきました。

 

【図41】  カーボンニュートラルの取り組み課題(企業規模別)

 

本調査では、
大企業 :従業員数3,000人以上
中堅企業:従業員数300人以上~3,000人未満
中小企業:従業員数300人未満
と区分しています。

 

〇業種別でみると、製造業は「利益確保・拡大と環境性の両立が難しいこと」「自社の技術革新がカーボンニュートラル達成のために十分でないこと」の比率が高いことが見て取れます【図42】。

 【図42】 カーボンニュートラルの取り組み課題(業種別)

 

本調査では、
大企業 :従業員数3,000人以上
中堅企業:従業員数300人以上~3,000人未満
中小企業:従業員数300人未満
と区分しています。
  • 〇カーボンニュートラルの取り組み状況別でみると、すでに取り組んでいる企業は、「利益確保・拡大と環境性の両立」や「顧客や取引先を巻き込んだ取り組みができていないこと」の比率が全体と比べて高く、検討段階の企業は、知識不足や人材不足といった課題に直面していることがわかりました【図43】。

                             

【図43】カーボンニュートラルの取り組み課題(取り組み状況別)

 

 回答企業の概要

 ■本社所在地

 ■業種

 

 

■従業員数 

■売上高

【調査結果を受けてのコメント】

  • 〇今回は、日本能率協会が毎年実施している「経営課題調査」の2022年度の調査結果速報の第3弾として、カーボンニュートラルの取り組み状況と課題について調査結果をご紹介しています。

 

〇2010年10月に日本政府が発表した「2050年カーボンニュートラル宣言」を契機として、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けて大手企業を中心に取り組まれていることが確認できました。大企業では5割の企業が「積極的に取り組んでいる」という回答に対し、中堅企業では、4%、中小企業では、4.8%と、企業規模別で差が出ています。

経営課題のなかでのカーボンニュートラルの位置付けについては、大企業では、2%の企業が重要課題として位置付けているのに対し、中堅企業では、31.2%、中小企業では、8.3%と、企業規模が小さくなるにつれ、「重要課題」の比率が減少しています。

カーボンニュートラルの取り組み課題について、大企業は、2番目に「顧客や取引先を巻き込んだ取り組みができていないこと」と、4割が回答しています。現在は、大企業の取り組みが先行していますが、今後は、サプライチェーンにおける全体に影響が出てくると考えられます。中堅・中小企業についても、これからは経営課題として位置づけ、推進することがより期待されてくると考えられます。