『日本企業の経営課題2023』 調査結果発表 当面する経営課題は「現在」「3年後」「5年後」のすべてで「人材の強化」が最多 昨年から重視度が急激に高まる
2024.4.10 14:00
一般社団法人日本能率協会(会長:中村正己、JMA)は、企業が抱える経営課題を明らかにし、これからの経営指針となるテーマや施策の方向性を探ることを目的に、1979年から、企業経営者を対象に、「当面する企業経営課題に関する調査」を実施しています。今年は2023年11~12月に実施し、528社からの回答を得ました。
企業各社が考える自社の「現在」や「3年後」「5年後」の経営課題、また昨年・一昨年からの課題の変化について、ご報告します。
約半数の企業が「現在」「3年後」の経営課題と認識 2.「現在の課題」は「人材の強化」が急激に高まった他、「働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上」も増加傾向 3.「3年後の課題」は「人材の強化」が約半数、「デジタル技術の活用・戦略的投資」は減少傾向 4.「5年後の課題」は「人材の強化」が最多。「ブランド力の向上」の重視度も増加 |
- 「2023年度(第44回)当面する企業経営課題に関する調査」概要
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調査時期 2023年11月13日~12月8日
調査対象 JMAの法人会員ならびにサンプル抽出した全国主要企業の経営者(計5,004社)
調査方法 郵送調査法(質問票を郵送配布し、郵送およびインターネットにより回答)
回答数・回収率 回答数528社・回答率10.6%(回答企業の概要は6ページに記載)
1.企業が当面する経営課題は「現在」「3年後」「5年後」のすべてで「人材の強化」が最多
約半数の企業が「現在」「3年後」の経営課題と認識
- ・自社が当面する経営課題を、「現在」「3年後」は上位3つまで、「5年後」は1つだけ、下図の20の項目から選択していただいたところ、「現在」「3年後」「5年後」のすべてで「人材の強化」が最も重視度の高い経営課題となりました。【図1】
- ・「人材の強化」は、約半数の企業が「現在」の経営課題と位置付けています。また、「3年後」でも同様に約半数の企業が、「5年後」でも約15%の企業が最重視課題と位置付けるなど、多くの企業において直近の課題であるだけでなく、長きにわたる課題になると捉えられていることがわかります。
【図1】 「現在」「3年後」「5年後」の経営課題
※「現在」「3年後」は上位3つまで、「5年後」は1つだけ回答 (n=689)
2.「現在の課題」は「人材の強化」が急激に高まった他、「働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上」も増加傾向
・「現在」における経営課題のトップ3は、第1位「人材の強化」(9%)、第2位「収益性向上」(44.9%)、第3位「売り上げ・シェア拡大」(32.0%)となりました。【図2】
- ・過去3年間の推移を見ると、第1位から第3位までの項目に変わりはないものの、「人材の強化」が昨年から8ポイント増加したことで順位が入れ替わり、昨年の第2位から第1位となりました。
- ・他に、「働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上」「株主価値向上」は、昨年と比べそれぞれ3ポイント、3.0ポイント割合が増え、3年連続で増加してきています。「働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上」の重視度の増加は、人材への重要度が高まってきていることのひとつの表れとみることもできます。「株主価値向上」は、取り組みの有無が投資家の関心や企業の評価に直接的・間接的に繋がるため、経営層の中でも優先的に取り組むべき課題であるという認識が高まっていることが考えられます。
【図2】 「現在」の課題(上位項目)の過去3年間の推移
※上位3つまで回答
3.「3年後の課題」は「人材の強化」が約半数、「デジタル技術の活用・戦略的投資」は減少傾向
・「3年後」の課題については、第1位が「人材の強化」(4%)、第2位が「収益性向上」(30.1%)、第3位が「事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築」(28.0%)となりました。【図3】
- ・「人材の強化」は第2位と比べ15ポイント以上高く、圧倒的に多くの企業が課題と捉えていることが分かります。また、過去3年間の推移を見ると、1年ごとに約5ポイントずつ増加しており、重要性が急激に高まっていることも見てとれます。他に、「事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築」(+7ポイント)、「技術力・研究開発力の強化」(+2.0ポイント)も昨年より割合が増加しています。
- ・反対に、「デジタル技術の活用・戦略的投資」は、一昨年・昨年に続けて割合が減少し、順位を下げています。すでに多くの企業で取り組みがなされていること、また技術の進化のスピードが速く企業側でも3年後にどのような状況を迎えているかを認識できず、課題と捉える企業が減少したことが想像されます。
【図3】 「3年後」の課題(上位項目)の過去3年間の推移
※上位3つまで回答
4.「5年後の課題」は「人材の強化」が最多。「ブランド力の向上」の重視度も増加
・「5年後」の課題は、第1位「人材の強化」(3%)、第2位「事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築」(11.7%)、第3位「CSR、CSV、事業を通じた社会課題の解決」(8.3%)となりました。【図4】
- ・昨年からの変化としては、「人材の強化」が6ポイント増加し最重視課題となったこと、また「ブランド力の向上」(+3.2ポイント)が増加したことが挙げられます。
- 「ブランド力の向上」は、コーポレートブランディングの必要性が浸透するなかで、すべての事業推進にかかわることとなる企業価値向上を、5年後の課題として想定する企業が増加していることが考えられます。
【図4】 「5年後」の課題(上位項目)の過去3年間の推移
※1つだけ回答
調査結果を受けてのコメント ・本調査は1979年より毎年実施をしている調査ですが、「現在」「3年後」「5年後」のすべてで「人材の強化」が最重視課題であり、企業の「人材の強化」への課題感が浮き彫りになる結果となりました。 ・要因の一つとしては、コロナ禍の採用抑制や育成機会の減少が想定されます。2023年5月の新型コロナウイルス5類移行を契機に、多くの企業で経済活動は平時に戻ったと考えられますが、事業活動を継続・発展、また新しい価値や事業を創造していくための人材の不足に直面している企業が多いのではないでしょうか。 ・また、労働力人口の減少や雇用の流動化により、人材確保の難易度が高まっていることも要因と考えられます。「現在」の課題として、「働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上」が昨年より増加していることもその表れと捉えることができます。 ・他に、生成AIの登場をはじめとしたテクノロジーの進化により、社会で必要とされる能力・スキルが急激に変化してきていることも要因と考えることができます。リスキリングの重要性が叫ばれて久しいですが、その必要性は今後も高まっていくでしょう。 ・人材への課題感の高まりの背景としては、上記のように様々な要因が考えられます。人材の強化は長きにわたり企業を悩ませ続ける課題となりそうです。 |
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