「熱中症警戒アラート」の基準「暑さ指数」を知っていますか?【熱中症に関する意識・実態調査2020】

夏本番を迎え、いよいよ来年から本格展開される「熱中症警戒アラート」が発表されました。さて、この「熱中症警戒アラート」、皆さんは耳にしたことがありますか。

環境省では今年7月1日から関東甲信1都8県で「熱中症警戒アラート」を開始し、来年からは「高温注意情報」に替わって全国的に運用されることが予定されている「熱中症警戒アラート」。その基準となるのは「暑さ指数(WBGT)」です。「暑さ指数」は、熱中症を予防する目的で考案された、暑さの要因となる気温・湿度・輻射熱を取り入れた指標で、単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されます。暑さ指数が28℃以上になると熱中症による救急搬送者数や重傷者数が増加するといわれており、33℃以上になることが予測されると「熱中症警戒アラート」が発表されます。

▲環境省「熱中症予防情報サイト」から配信される熱中症予防情報メールの受信画面

▲環境省「熱中症予防情報サイト」から配信される熱中症予防情報メールの受信画面

 

では、この「暑さ指数」についてどのくらいの人が知っているのでしょうか。

タニタでは2020年6月5日から8日までの4日間、10代~60代の男女1000名を対象に「熱中症に関する意識・実態調査2020」を実施しました。その結果、「暑さ指数(WBGT)」の認知度は45.8%と全回答者1000人の半数に満たず、しかも、そのうち「どのような指標か知っている」と回答したのはわずか12.2%で約1割ということが分かりました。先日この結果を弊社のプレスリリースでご案内したので、今回は性年代別や地域別にさらに細かく見ていきます。

 

「熱中症に関する意識・実態調査2020」

https://www.tanita.co.jp/cms/press/pdf/2020/heatstroke_research.pdf 

 

■「暑さ指数」認知が最も高いのは30代男性

「暑さ指数」の認知率を性年代別に見たところ、最も高かったのは30代男性(58.6%)で、次に20代男性(53.0%)、40代男性(50.0%)と続きました。一方、女性は10代(34.9%)、30代(36.9%)の認知が低く、男女で異なる傾向が見られました。

 

▲暑さ指数(WBGT)の性別・性年代別認知率

▲暑さ指数(WBGT)の性別・性年代別認知率

 

■「暑さ指数(WBGT)」地域別の認知は? 北海道・東北地方では4割弱

さて、次に地域別の「暑さ指数(WBGT)」の認知度を見ると、他の地域に比べて、北海道・東北地方が低く、知らないと答えた割合は6割を超えました。また、「暑い時期に熱中症対策を行っているか」を尋ねたところ、「しない」と答えた割合は全体では30.5%だったのに対して、北海道・東北地域では37.5%と多くなりました。2019年の人口10万人あたりの熱中症による救急搬送件数※をみると、北海道と青森県は全国平均を下回っていましたが、東北地域の他県では平均を上回っていました。これらの地域に住む人も意識を緩めずに熱中症対策が必要そうです。

 

※総務省「2019 年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」

https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/heatstroke_geppou_2019.pdf

 

▲暑さ指数(WBGT)の地域別認知率

▲暑さ指数(WBGT)の地域別認知率

 

▲熱中症対策を行っている割合

▲熱中症対策を行っている割合

 

■暑さ指数(WBGT)をどう生かす? 

認知率については地域や性別ごとにばらつきがあることがわかりました。ここからは、「暑さ指数(WBGT)」について少し掘り下げていきます。さて、認知率はこのような形でしたが、暑さ指数(WBGT)を知るとどうよいのでしょうか。暑さ指数を基に熱中症対策ができるよう、暑さ指数(WBGT)に応じて、日常生活における危険度を「注意」「警戒」「厳重警戒」「危険」の4段階で分け、この段階ごとに注意すべき生活活動の目安や注意事項がまとめられています。例えば、暑さ指数28℃以上の「厳重警戒」と31℃以上の「危険」では、すべての生活活動で熱中症の危険があるとされ、「外出時は炎天下を避ける」や「外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する」とされています。

 

▲温度基準(WBGT)ごとの日常生活に関する指針

▲温度基準(WBGT)ごとの日常生活に関する指針

 

これは高齢者を含む一般生活者の日常生活に関する指針ですが、このほかにも「暑さ指数」を基準にした各種の指針が出されています。例えば、公益財団法人日本スポーツ協会から「熱中症予防運動指針」が公開されており、厚生労働省では職場における熱中症予防として身体作業強度等に応じたWBGT基準値を示し、職場のWBGT値を下げるなどの環境管理や作業時間の短縮等の作業管理を推奨しています。自分の生活や行動に合わせた指針を上手に活用することで、熱中症発症のリスクを小さくすることができます。

 

熱中症の基礎知識を身に付けて、環境状況に応じた対策を

今回の調査で暑い時期に熱中症対策を行っている人(695名)に、どのような対策を実施しているかを聞いたところ、「水分をこまめにとる」(79.1%)が最も高く、次いで、「扇風機・エアコンを使用」(54.5%)、「涼しい服装をこころがける」(54.0%)、「塩分補給をする」(38.3%)、「帽子を着用」(38.0%)となりました。

 

▲実践する熱中症対策

▲実践する熱中症対策

 

平常時、人のからだは外部の暑さなどの要因で体温が上がっても、汗や皮膚温度が上昇することで体温が外へ逃げる仕組みが備わっていて、自然と体温調節が行われます。熱中症とは、この体温調節ができず、体温が上昇して重要な臓器が高温にさらされたりすることにより発症する障害の総称です。熱中症は「環境」「からだ」「行動」の3つの要因が組み合わさって発症します。そのため、周囲の環境や自分のからだを総合的に判断して、対策を取ることで、確実に予防することができます。

 

<環境> 暑さ(気温だけではありません)が厳しい場合は要注意

・気温が高い

・湿度が高い

・日差しが強い

・風が弱い

・閉め切った屋内

・エアコンのない部屋 など

 

<からだ> 体温調節の能力が低い/落ちている人は要注意

・高齢者、乳幼児、肥満の人(からだの仕組み上熱中症になりやすい)

・糖尿病などの持病

・下痢やインフルエンザでの脱水状態

・二日酔いや寝不足などの体調不良 など

 

<行動> あらゆる人でさらに注意が必要

・激しい運動、慣れない運動

・長時間の屋外作業

・水分補給できない状況 など

 

ここで先ほどの調査の選択肢が、「環境」、「からだ」、「行動」3つの熱中症の要因のどれにあたるかを大まかに色分けしました。8割以上が実施する「水分をこまめにとる」は、熱くなったからだを冷やし、発汗による脱水を防ぐことができるので、熱中症を予防する行動として重要です。一方で、暑さが極端に厳しい場合は、発汗による放熱では体温調節が追い付かない恐れや血液中の塩分濃度やミネラル濃度が低下し症状が悪化する恐れがあります。仕事や部活動の際には、「外出しない」「休憩する」など、暑さそのものを回避する方法はなかなか取りづらいかもしれませんが、自分のからだの様子を把握して、暑さ指数28℃や31℃以上の熱中症の「厳重警戒」や「危険」となる場合は、「水分や塩分補給」と他の対策とを積極的に組み合わせて、暑さを避ける熱中症対策を行うことが必要です。

 

▲熱中症の3要素で「実践する熱中症対策」を色分け

▲熱中症の3要素で「実践する熱中症対策」を色分け

 

今年から試行的に始まる「熱中症警戒アラート」では、熱中症への注意を促す呼びかけや対象都県内の観測地点毎の最高暑さ指数(WBGT)とともに、熱中症予防におけるポイントが併せて発表されます。こうした情報を積極的に入手して熱中症対策に生かしてみませんか。