「スーパーやコンビニで買える身近な食材にこだわった」 ご当地タニタごはんコンテスト受賞者に聞く「ヘルシー郷土料理レシピのつくりかた」(後編)

今年も募集を開始した「ご当地タニタごはんコンテスト」。日本全国に点在する郷土料理のレシピを「タニタが考える健康的な食事の目安」に基づき、現代風にアレンジして競い合うイベントです。毎年、数百のレシピの中から予選を通過した15チームが全国大会へ進み、郷土愛あふれるプレゼンテーションと試食審査で盛り上がります。どれも郷土料理をベースにしつつも、いい意味で郷土料理っぽくない、アップデートされた独創的なものばかり。今回はその中から、2020年度の準グランプリに輝いた京都府チームにレシピ開発の秘話を伺いました。

 

前回の記事

あのレシピはどうやって生まれた? ご当地タニタごはんコンテスト受賞者に聞く「ヘルシー郷土料理レシピのつくりかた」(前編)

「第3回ご当地タニタごはんコンテスト」準グランプリ・「なぃすなワンプレートランチ」(京都府)はどうやって生まれた?

2組目は第3回大会の準グランプリチームです。京都府の郷土料理である「いとこ汁」や「丹後寿司」をベースに、「スーパーやコンビニで買える身近な食材に絞って考案した」というアイデアあふれるレシピ。カフェご飯のようなおしゃれな見た目も特徴です。サンドイッチにはサバ缶を使い、豆乳豆花(トウファ)のジャムにはなんと「なす」が使われています。薬膳の考え方である「食材すべてをいただく」をテーマとしており、なすは皮も捨てずにキンピラにするという徹底ぶり。見て楽しい、食べて美味しいレシピはもちろん栄養価もばっちり。そんな開発の裏側を、弓倉 靜英さん、松下 直子さん、渡海 敦子さん(以下「京都チーム」)に教えてもらいました。

いとこ汁・丹後寿司をベースにした「なぃすなワンプレートランチ」の画像

▲いとこ汁・丹後寿司をベースにした「なぃすなワンプレートランチ」

左上から、なすの皮キンピラ、揚げとちりめんじゃこのサラダ、豆乳豆花なすジャムがけ、いとこ汁風スープ、丹後寿司サンド

―郷土料理のアレンジレシピを制作するにあたり、まず何からはじめましたか?

京都チーム:恥ずかしながら、私たちの地元である長岡京市、京都の郷土料理はなにがあるのか、はじめは全く知りませんでした。なので、まずは3人で集まって検索するところから始めました。レシピを考えていく中で、京都の郷土料理と長岡京市の特産品を合わせたら、郷土料理と長岡京、両方のアピールが出来ると思い、このレシピが完成しました。

 

月1回、薬膳ランチを提供しているのですが、味はもちろん、食べるときに視覚から得られる美味しさも大切だと思っています。今回のコンテスト応募にあたって過去の入賞作品や、過去のエントリー料理の分析を行ったのですが、カフェスタイルのレシピがなかったんです。「これだ!」と思いました。実は数年前に別の料理コンテストに出場した時もカフェメニューで参加しており、そのときから手応えを感じていました。そして過去の入賞レシピには登場していなかった「パン」を使い、サンドイッチでアレンジしてみようと考えました。

 

郷土料理をアレンジするときはまず、身近な食材で食べやすいものを中心に考え、次に実際に作ってみて、エネルギー量や塩分量を計算。そして美味しさを保てるギリギリのところで分量の調整をしていきました。

 

―レシピの開発にかかった時間は?

京都チーム:月に1度は集まるようにしていましたが、約半年位はかかったかと思います。(コロナ禍となる)2020年だったので、集まれない期間が続いた時は、オンラインで打ち合わせをしたり、個人でそれぞれできることをしたりしていました。ご当地タニタごはんコンテストの応募は2回目で、募集が始まる前から準備に取り掛かっていたこともあり、コロナで作業が進まない時も、余裕をもって進められました。

主菜は比較的すぐ決まりましたが、それに合わせる副菜を何にしようか、全体のバランスを考えると…さらに迷いました。書類審査通過後も、主菜の量が足りず、全国大会に向けてバタバタでした。

 

―「できるだけ家にある食材を使う」というコンセプトはどうやって生まれたのでしょうか?

京都チーム:私たちはふだん、基本的に身近な食材でできる薬膳を提唱しています。わざわざ買いそろえないとできないものではストレスになり、本末転倒だと考えています。「楽しく、美味しく」を日常にできたらと思いながら食材を選びました。

 

よく使う食材や調味料は廃棄になりにくいのですが、料理本などを見て作ってみたいと思ってそのために買ったものは、結局ほかに使い道がなくて、いつの間にか賞味期限が切れていて廃棄…。そのような経験は、何度もあります。お料理をつくるにあたっては「廃棄を減らすこと」も重要です。そんなことも考えて生まれたレシピです。

 

缶詰は防災の観点から備蓄しておく人も多いと思いますが、ついほったらかして、賞味期限が過ぎていたなんてことはありませんか? 備蓄品はローテーションしないといざというときに使えないので、新しいものと古いものを入れ替えるタイミングにもぴったりなレシピにしました。また、缶詰めは下処理がいらず、時短にもなるというところが主婦に愛される要素だと思っていて。とくにサバ缶は手ごろな価格で調理もしやすく、栄養価も高いうえ、チームの3人ともサバ缶ラブだったので、満場一致で採用になりました(笑)。

サバ缶の画像

▲サバ缶

―エネルギー量や塩分量を抑えるコツは?

京都チーム:食材どうしの相乗効果や調理法で素材そのものの旨味を引き出し、エネルギー量や塩分を抑えつつ美味しいレシピになるように工夫しました。

主菜と主食を兼ねるサンドイッチはボリュームとエネルギー量があったため、他の品目は抑えめにして、盛り付けの食器で貧素に見えないように工夫しています。 また、今回の主菜で使用したパンは、お米とは異なり塩分を含むため、難易度が高かったです。パンの厚みで塩分量を調節して、なんとかギリギリに抑えています。

全国大会当日でも使用した「副菜の部分が3つに分かれた木のトレイ」は京都から持参

▲全国大会当日でも使用した「副菜の部分が3つに分かれた木のトレイ」は京都から持参

京都チーム:美味しいことはもちろんですが、朝食やランチに楽しんで食べていただけるレシピを目指しました。今回のメニューは主菜だけでも、5大栄養素がしっかり摂れて栄養バランスもばっちりです。単品だとどうしても糖質が多いイメージがありますが、今回受賞したメニューは野菜もたっぷり摂れるのもポイントです。

 

―いちばん苦労したところは?

京都チーム:レシピ開発にあたり「美味しさとエネルギー量の両立」、そして、いかに「特別でないようにするか」ですね。また、2020年はコロナが重なり、全国大会も、地元から東京に行くかどうか、チーム内で意見が分かれました。私たちのチームの現地参加は1名のみでしたが、きっとどのチームも同じように悩まれたんだなと感じました。こんな中でも、(リアルとオンラインのハイブリッドにより)開催してくれたコンテスト実行委員会の皆様には感謝しかないです。もし延期になっていたら、きっと心は折れていました。

当日は松下さんが現地で参加

▲当日は松下さんが現地で参加

京都チーム:全国大会のプレゼンは3分間ですが、つくりはじめた当初は10分以上になってしまい、これを制限時間内にまとめるのに苦労しました。1人が10分のプレゼン資料を作成し、他の2人が3分にまとめるという連携プレーで出来上がりました。最終的に、自己紹介も数秒程度になりました()

特産品の「なす」をまるごと使用! 「なすの皮きんぴら」「豆乳豆花(トウファ)なすジャムかけ」のレシピを紹介

京都チーム:薬膳では一物全体、食材すべてをいただくことが、健康につながると考えられています。そこで、長岡京市の特産品のひとつでもあり、全国どこでも手に入りやすい「なす」を丸ごと使って美味しいレシピを作りたいと思いました。なすの栄養はほぼ皮に含まれており、あとは水分です。そのため、なんとか「なすの皮」を利用できないかと考えて辿りついたのが「きんぴら」、そして、なすの水分を生かして身の部分は「ジャム」にしました。

 

特にジャムは日常的に使えて、デザートにするのに簡単かつヘルシーなものはないかと話し合った結果、生まれました。なすをジャムにしてみると、どこか抹茶のような旨味があり「おいしいやん!!」となり、「ジャムに合う、簡単に作れるデザートは…?」と、なすのジャムを起点に豆乳豆花(トウファ)が誕生しました。

 

なすの皮キンピラ

1人分)エネルギー量:38kcal、塩分量:0.3g

 

<材料>

れんこん:10g

にんじん:10g

なすの皮:10g ※身はデザートで使用します

青ピーマン:10

薄口しょうゆ:2g

本みりん:2g

ごま油:1.5g

いりごま:0.5g

 

<つくりかた>

①青ピーマンは半分に切って種を取り除き、にんじんは皮をむく。

②にんじんとなすの皮は5cmほどの千切りに、青ピーマンも千切りにする。

③れんこんは皮をむき、イチョウ切りにする。

④フライパンにごま油を熱し、れんこん、にんじん、青ピーマン、なすの皮の順番で野菜を炒め、本みりん、薄口しょうゆで味付けをする。

⑤④をお皿に盛り付け、いりごまを上から振りかけて完成。

 

豆乳豆花(トウファ)なすジャムかけ

1人分)エネルギー量:54kcal、塩分量:0g

 

<材料>

豆乳:50g

はちみつ:2g

粉ゼラチン:0.75g 

なす(皮を剥いた身の部分):15

上白糖:5g

レモン果汁:1g

 

<つくりかた>

①豆乳、はちみつを鍋に入れて火にかけ、泡立たせないようにゆっくり混ぜてはちみつを溶かす。

②温度が80度になったら、粉ゼラチンをダマにならないように入れ、ゆっくり混ぜながら溶かす。

③②を器に流し入れ、粗熱が取れたら、冷蔵庫で約一時間冷やし固める。

④なすの皮を剥き、中身を5㎜角に切り、レモン果汁と砂糖をまぶし、水分を出すため約30分間置いておく。

⑤④の水分が出たら、小鍋でトロッとするまで煮詰めてジャムは完成。

⑥冷やし固めた豆乳豆花(トウファ)を器に盛り付け、上からなすジャムをかけて完成。

※ゼラチンの種類によって使用方法が異なる場合があるため、詳しくはお持ちの商品のパッケージを参照してください。

手前から「なすの皮キンピラ」、「豆乳豆花なすジャムがけ」 

▲手前から「なすの皮キンピラ」、「豆乳豆花なすジャムがけ」

アレンジレシピは、2022831()まで募集中。全国5ブロック(北海道・東北、関東・甲信越、中部・近畿・北陸、中国・四国、九州・沖縄)で書類審査による予選を行い、全国大会に出場する15チーム(レシピ)を選出。20221120日(日)に服部栄養専門学校(東京)で全国大会を開催し、グランプリと準グランプリを決定します。グランプリには賞金50万円を授与し、上位入賞チームには商品化に向けたサポートを実施する予定です。詳細は「ご当地タニタごはんコンテスト」のURLよりご確認ください。今年もたくさんの独創的なレシピに出会えますように。

 

ご当地タニタごはんコンテスト

 

受賞時のインタビューもぜひご覧ください!

「第3回ご当地タニタごはんコンテスト」受賞者インタビュー 

 

Text:合同会社サウザンスマイルズ