【ニュースレター『KAITEKI通信』vol.1】自動車材料・食品・プラスチックなど、身近な素材が進化中!

すべての人が快適に暮らせる2050年に向けて

三菱ケミカルホールディングスのニュースレター「KAITEKI通信」では、未来に向けたSDGs・サステナビリティへの取り組みについてお伝えします。

三菱ケミカルホールディングスでは、「人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていくこと」を表す「KAITEKI」の実現をビジョンとして掲げ、環境・社会課題の解決にとどまらず、社会そして地球の持続可能な発展を目指しています。全世界的にSDGsに積極的に取り組む流れも踏まえ、当社事業の特長をお伝えするニュースレター、「三菱ケミカルホールディングス KAITEKI通信」を創刊します。ご企画等の一助としてご活用いただけますと幸いです。

2020年10月、菅義偉内閣総理大臣が地球温暖化への対応として「2050年カーボンニュートラルの実現を目指す」と宣言しました。日本は2050年までに「二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ため、2020年12月25日に開催された第6回成長戦略会議において、経済産業省を中心に関係省庁も連携して策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が報告されました。

第1回のニュースレターでは、こうした時節を受けて、「グリーン成長戦略」内で挙げられている実行計画の「自動車・蓄電池産業」「食料・農林水産業」「資源循環関連産業」の分野において、当社の事業会社である三菱ケミカル(以下、「MCC」)が取り組んでいる事業をご紹介します。今1才の子どもが30才になるのが2050年。すべての人が快適に暮らす未来のために、どんな取り組みが進行中で、現在の生活にどんな変化が起きているのかをお伝えします(以下、温室効果ガスは「GHG」と表記)。

―ご参考―
政府による2030年度までの国内産業のGHG排出量削減目標値…26%削減(2013年度対比)
2030年度までの当社事業全体のGHG排出量削減目標値…26%削減 925万tCO2-eq(2013年度対比)

 

contents 1  自動車材料の進化:自動車は年々「軽く」なっている

「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」内の実行計画・「自動車・蓄電池産業」の中心は自動車の電動化推進です。政府が掲げる「2030年半ばまでに乗用車新車販売で電動車100%を実現」の目標に伴い、各自動車メーカーは車体の軽量化を目指し、金属にかわる炭素繊維素材、プラスチック素材が注目されており、今後のスタンダードになっていく見込みです。MCCが開発に取り組んでいる未来の自動車材料となる素材をご紹介します。

~2050年に向けて~


MCCでは、車体の軽量化を実現する素材、電気自動車の要であるリチウムイオン電池用素材などの開発を通じて、エネルギー利用効率を高め、車の排気ガスに含まれるGHGの削減に貢献します。
電気自動車には、ハイブリッド自動車の50〜100倍程度、プラグインハイブリッドには10〜20倍程度の容量のリチウムイオン電池が搭載されるため、ガソリン車以上に車体の軽量化が重要です。
リチウムイオン電池の需要は、今後さらに拡大する見込みです。これにともない、材料の性能向上、高速・高品質・低炭素製造プロセス、リユース・リサイクルのシステム確立などが求められています。

【車体の軽量化を実現する素材の開発】
■炭素繊維 SMC(Sheet Molding Compound)
SMCは、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の中間基材の一種で、長さ数センチメートルにカットされた炭素繊維をプラスチック中に分散させたシート状の材料です。炭素繊維SMCは鉄に対し重さが1/3程度のため、車体の軽量化を実現し、CO2排出量に大きく関係します。航空機でもCFRPの適用が進められるなど注目の素材です。

 SMCを採用した「GRヤリス」(写真提供:トヨタ自動車㈱)

■ポリプロピレン、ポリエチレン
軽量化だけでなく剛性と耐久性に優れるガラス長繊維強化ポリプロピレン「FUNCSTERTM」、卓越した発泡成形により軽量化を実現させるポリプロピレン「WAYMAXTM」、ポリエチレン素材「ノバテック™HD」などが、鉄・アルミの代替として使用されています。

 FUNCSTERTMを用いた自動車ドアモジュール

 ポリエチレン製の自動車用燃料タンク

【リチウムイオン電池材料の開発】
リチウムイオン電池の主な部材は、電解液・正極材・負極材・セパレーターの4つで、MCCは、電解液と負極材を製造しています。
■負極材
負極材は、他社製造品よりも製造時のCO2発生量が6割少ないのが特長です。天然黒鉛を使用することでCO2の発生を軽減しています。
■高性能電解液
電解液は、独自開発の機能性添加剤の使用により、電池性能向上に大きく貢献します。

 高性能電解液と負極材

≪今、実現しているKAITEKI≫
プラスチック素材などを使用した自動車は、自動車材料を高強度のまま薄く軽く製造できるため、同じサイズでも金属類を用いたものよりもの車内のスペースが広くなり、空間の快適性というメリットも提供しています。材料の軽量化により、音が伝わりやすくなるという点もありますが、MCCでは、世界最小レベルの超極細繊維を用いた吸音材「XAI™」も開発しており、今後車の部材として展開する予定です。

 

contents 2  バイオプラの開発:車の内外装、コーヒーカプセルなどに植物が

「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」内の実行計画・「資源循環関連産業」では、リデュース、リユース、リサイクル、リニューアブルについて、法律や計画整備により技術開発・社会実装を後押しし、今後は技術の高度化、設備の整備、低コスト化等により更なる推進を図るとされています。リニューアブル(バイオ化・再生材利用等)については、化石資源由来のプラスチックを、再生可能なバイオプラスチック・紙などへ代替させることを推進しています。GHG増加による地球温暖化問題の解決策のひとつであるリニューアブル。MCCが地球を守るために開発している素材をご紹介します。

~2050年に向けて~
2020年7月に、プラスチック製レジ袋の有料化が開始され、環境問題を見直すことが呼びかけられています。こうした中で、サトウキビやトウモロコシなどの植物由来、再生可能なプラスチックへ転換していく動きも本格化しています。MCCでは、植物由来のプラスチックを開発することで、GHG削減、炭素循環に貢献します。
近年では、植物由来のプラスチックの品質改良が進み、耐久性や衝撃強度、耐熱性、透明度などが向上し、自動車の内装材・外装材としても活用されています。将来に向けた世界的な流れである自動車のCASE化(「Connected・コネクテッド」、「Autonomous・自動運転」、「Shared & Services・シェアリング」、「Electric・電動化」)における、「Electric」についても、軽量化により電気自動車のエネルギー効率に貢献しています。

【再生可能な植物由来プラスチックの開発】
■DURABIOTM
植物由来のイソソルビドを原料に使用したエンジニアリングプラスチックです。
軽量であることに加え、高い耐衝撃性や耐熱性、耐傷付性をもち、透明性や耐候変色性も優れているため、自動車の内外装意匠部品やメガネレンズ、携帯電話のボディなど幅広く使用されています。従来のエンジニアリングプラスチックに比べ、製造時のCO2排出量を約30%削減することができます。
発色性がよく、顔料を配合するだけで鏡面のように平滑感・深みのある色合いを表現できるため塗装を省くことが出来ます。さらに塗装やコーティングの作業時に発生するCO2やVOC(揮発性有機化合物)の発生を大幅に削減することが可能です。

  
左:DURABIOTM
中央:マツダ「CX-8」内装部品(写真提供:マツダ㈱)
右:マツダ「CX-5」フロントグリル(写真提供:マツダ㈱)

【水とCO2に分解される生分解性プラスチックの開発】
■BioPBSTM
植物由来の生分解性プラスチックです。自然界の微生物の力で水とCO2に分解されます。一般的に生分解性プラスチックは通常の土中では分解されにくいとされていますが、BioPBSTMは、常温での生分解性に優れています。
一般的な生分解性プラスチックと比べて、耐熱性、ヒートシール性に優れた特長をもっています。また、アメリカ食品医薬品局(FDA)をはじめ、各国の食品衛生に関する基準に準拠しているため、使い捨て食器や紙コップ、食品包装材にも利用されています。
環境対応における先進国である欧州では、コーヒー抽出かすが残るためリサイクルに適していないコーヒーカプセルにも多く採用されています。

  
左:BioPBSTM素材《 BioPBSTM使用製品》
中央:紙コップ
下:コーヒーカプセル

≪今、実現しているKAITEKI≫
BioPBSTMを用いた農業用マルチフィルムが実用化されています。従来のプラスチックを使用したものは、リサイクルが難しく、使用後の回収・処分にも労働力・経済的な負担が生じていました。BioPBSTMを用いたマルチフィルムは廃棄処理が不要なため、高齢化が進む農業従事者の肉体的負担も緩和します。

 

contents 3  食品ロスを減らす最新技術:期限の長さ、包装に秘密あり

「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」内の実行計画・「食料・農林水産業」では、資材原料・エネルギーの調達や、食料の生産から消費までのサプライチェーンの各段階の取組を通じて、持続可能な食料システムの構築を目指していく必要があるとされています。食品製造は、加工などの工程にはじまり、廃棄された食品を生ゴミとして焼却処分するところまで、全工程を通じてGHGを排出します。中でも、大きな食料システムにおいて消費者に近い問題が「食品ロス」です。廃棄された食品を生ゴミとして焼却処分することは、GHG排出につながります。世界のGHG排出量のうち、食品の廃棄によるものは、全体の8%から10%を占めているといわれています。MCCが食品ロス削減に貢献するために開発している素材をご紹介します。

~2050年に向けて~
MCCでは、食品の長寿命化を実現する食品包装材を開発することで食品ロスの発生を抑え、食品の廃棄によるGHG排出量を減らし、カーボンニュートラルに貢献します。
食品包装材は、ガスバリア性、防湿性、保香性・耐薬品性などの性能によって、インスタント食品やハムなどの加工品の長寿命化を支えています。また、抗菌・鮮度保持シートは消費期限の短いお弁当やお持ち帰り食品の品質保持に適しています。

【食品包装材の開発】
■ソアノールTM
高いガスバリア性を有することから、真空包装や窒素・炭酸ガス等を充填する包装に最適です。品質劣化につながる酸素を遮断するため、マヨネーズ容器などにも使用されています。コンビニでも買えるサラダチキン、ゼリーやレトルトご飯の容器など身近な商品に幅広く使われています。

ソアノールTM使用製品

■ダイアミロンTM
異なる機能の複数のプラスチックを積層し、性能を高めた高機能フィルム包装材です。透明性に優れています。医薬品の包装にも使われています。

ダイアミロンTM使用製品

■テックバリアTM
プラスチックフィルムの表面にシリカを蒸着した酸素バリア性が高く、水蒸気も通しにくい、レトルト食品に対応した梱包材です。高湿度でも食品を守ります。

テックバリアTM使用製品

【抗菌・鮮度保持シートの開発】
■ワサオーロTM
日本古来の食材のひとつ「ワサビ」の中に含まれるアリルカラシ油の強力な抗菌力を応用し、食品の鮮度保持や日持向上のために研究・開発された抗菌剤です。食中毒菌、腐敗細菌、カビ、酵母などに高い静菌効果を発揮することが、様々な実験や事例で確認されています。シートタイプのものは駅弁にも使われています。コロナ禍でのテイクアウト需要拡大で注目されています。
 
右:ワサオーロTM
左:使用例

≪今、実現しているKAITEKI≫
おいしさを長持ちさせる包装材を使用した食品は、災害に備えたストックにも最適なほか、新型コロナ禍においても買い物回数の削減に役立つ、新しい生活様式にもマッチした商品となっています。

<本件に関するメディアからのお問い合わせ先>
三菱ケミカルホールディングス 広報事務局(共同ピーアール内)
担当:平山、奥平、都築、阿蘇品
電話:03-3571-5204
FAX:03-4540-8325
E-mail:mchc-pr@kyodo-pr.co.jp