『日本企業の経営課題2022』調査結果速報【第2弾】スタートアップとの協業のポイントは「お互いの目的・ビジョンの一致」が7割 新規事業の開発を目的として交流する場合が6割

 一般社団法人日本能率協会(会長:中村正己、JMA)は、企業が抱える経営課題を明らかにし、これからの経営指針となるテーマや施策の方向性を探ることを目的に、1979年から、企業経営者を対象に、「当面する企業経営課題に関する調査」を実施しています。

 今年は2022年7~8月に調査を実施し、689社からの回答を得ました。今回は第2弾として、各社におけるスタートアップ企業との協業についての取り組み状況について、ご報告します。

詳細プレスリリースをご入用の場合は、お問合せをお願いします。

1.DXに取り組む企業は55.9%と半数超。大企業では8割超に
取り組みの成果が出ている企業は7割と昨年に比べ増加

2.取り組みを始めた企業は、全社がDXによる「業務プロセスの効率化・高度化」を重視
DXの取り組みにより「抜本的な事業構造の変革」を重視する企業が昨年から大きく増加し9割

3.推進の課題として「DX推進に関わる人材が不足」を挙げる企業が8割
ただし、昨年と比べ全体的に課題感は減少傾向

※詳細な調査報告書は12月に公表予定です。

  • 2022年度(第43回)当面する企業経営課題に関する調査」概要

調査時期

2022年722日~819

調査対象

JMAの法人会員ならびに評議員会社、およびサンプル抽出した全国主要企業の経営者
(計5,000社)

調査方法

郵送調査法(質問票を郵送配布し、郵送およびインターネットにより回答)

回答数・回収率

回答数689社・回答率13.8% (回答企業の概要は8ページに記載)

 ※ 調査データを引用する際は、出典名(一般社団法人日本能率協会「日本企業の経営課題2022」)を明記してください。

1.大企業の4割がスタートアップ企業と協業。中堅・中小企業は6割が未だ検討せず

〇スタートアップ企業との協業状況は、全体の4%が「協業している」、11.6%が「協業はしていないが支援・交流している」、17.1%が「検討中」との回答がありました【図1】

  • 〇大企業ではスタートアップ企業と、0%が「協業している」、18.6%が「協業していないが支援・交流している」との回答がありました。中堅企業と、中小企業についてはスタートアップ企業と、「協業・支援・交流しておらず、検討もしていない」との回答が約6割ありました。企業規模別にはっきりとした傾向が出ています。
  • 〇業種別にみると、製造業では2%、非製造業では23.7%が「協業している」と回答しており、非製造業の方がややスタートアップ企業との協業が進んでいることがわかりました。

 

【図1】  スタートアップ企業との協業・支援・交流関係 

本調査では、
大企業 :従業員数3,000人以上
中堅企業:従業員数300人以上~3,000人未満
中小企業:従業員数300人未満
と区分しています。

2.協業・支援・交流の具体的な内容は、製造業では、「技術提供・技術交流」が8割以上

○ スタートアップ企業と「協業している」または「協業していないが支援・交流している」と回答した企業(n=214)に具体的な内容を尋ねたところ、【図2-1】のとおり、「技術提供・技術交流」(65.9%)、「資金提供」(52.3%)、「人的支援・人的交流」(42.1%)の順で多い結果となりました。

○ 製造業では、「技術提供・技術交流」が8割以上であり、技術面での交流が中心であることが特徴となりました。

○ 非製造業では、「営業支援」が4割以上に対して、製造業は2割未満でした。

【図2-1】  スタートアップ企業との協業・支援・交流の具体的な内容(業種別)

○ 協業状況別でみると、協業している企業における具体的な協業内容は、「技術提供・技術交流」、「資金提供」、「人的支援・人的交流」、「営業支援」と、さまざまであり、支援・交流している企業の支援内容は、「技術提供・技術交流」が主であることがわかりました【図2-2】。

【図2-2】  スタートアップ企業との協業・支援・交流の具体的な内容(協業状況別)

3.交流のきっかけは「経営者や幹部の人脈」が5割以上

〇スタートアップ企業と「協業している」、「協業していないが支援・交流している」または「協業・支援、交流はしていないが検討中である」と、回答した企業(n=332)に交流のきっかけを尋ねたところ、「経営者や幹部の人脈」が2%で最も比率が高い結果となりました【図3】。続いて、「金融機関を通じて」(37.7%)「取引先を通じて」(34.3%)も高く、社内や企業活動での人脈といった、身近なリソースを頼りに出会うケースが多いようです。

  • 〇企業規模別でみると、大企業は「専門コンサルタントを通じて」「スタートアップ企業との接点づくりのための交流会」が全体と比べて高く、企業側から積極的に働きかけを行っていることがわかりました。一方で、中小企業は「経営者や幹部の人脈」の比率が高くなっています。
  • 【図3】  スタートアップ企業との交流のきっかけ

  • 4.協業・支援・交流の理由は、1位「新規事業の開発」が66.6%2位は「自社にない先進技術の獲得」(53.3%

    〇スタートアップ企業との協業・支援・交流理由を尋ねたところ、【図4】の通り、「新規事業の開発」が6%で最も比率が高く、次いで「自社にない先進技術の獲得」(53.3%)、「既存事業の強化」(46.1%)の順に高い比率となりました。既存事業の強化よりも新規事業の開発を目的とするケースが多く、さらには、自社にない技術の獲得が協業の理由となっていることが多いようです。

    〇企業規模別でみると、大企業はこの傾向が強く、「新規事業の開発」(7%)、「自社にない先進技術の獲得」(64.5%)と全体と比較して高い結果となりました。対して中小企業は先述の2項目の比率は全体と比較して低く、「販路拡大」が全体より16ポイント高いことが特徴的です。 

    【図4】  スタートアップ企業との協業・支援・交流理由(企業規模別)

  • 5.スタートアップ企業との協業のポイントは「お互いの目的・ビジョンの一致」が7割以上

    ○ スタートアップ企業との協業を適切に推進するためのポイントについて、最も高かったのは、「お互いの目的・ビジョンの一致」(71.1%)でした。3番目に高い「求める成果・目標の明確化」(46.3%)と併せて、目的や成果への認識を明確にすること、一致させることが必要であると考えられていることがわかりました【図5-1】。

  • ○ 企業規模別でみると、大企業は「経営戦略との連動」「事業スピードの加速化」が全体と比較して高くなっています。
  • 【図5-1】 スタートアップ企業との協業を適切に推進するためのポイント(企業規模別)
  • ○ 協業状況別で見ると、支援・交流に留まる企業は、お互いの目的・ビジョンの一致に対する重視度がやや低いが、協業している企業は、対等なパートナーシップの形成や、意思決定の迅速さ、経営戦略との連動などがポイントだと認識していることが特徴的な結果となりました【図5-2】。
  • 【図5-2】 スタートアップ企業との協業を適切に推進するためのポイント(協業状況別)
  • 回答企業の概要

  • ■ 本社所在地
  • ■ 業種
  •                         
  • ■従業員

    ■売上高

【調査結果を受けてのコメント】

今回は、日本能率協会が毎年実施している「経営課題調査」の2022年度の調査結果速報の第2弾として、スタートアップ企業との協業についての取り組み状況に関する調査結果をご紹介しています。

  • 〇まず、取り組み状況を見ると、大企業ではスタートアップ企業と、「協業している(0%)」、「協業していないが支援・交流している(18.6%)」との回答があり、約6割が協業または、支援・交流していることがわかりました。また、中堅企業と、中小企業についてはスタートアップ企業と、「協業・支援・交流しておらず、検討もしていない」との回答が約6割あり、事業規模によって、協業の差が出ています。

〇スタートアップ企業との協業・支援・交流の具体的な内容は、業種により差が出ています。最も多かった具体的な内容は、製造業では、「技術提供・技術交流」で9%ありました。他方、非製造業では、同じく1番目が「技術提供・技術交流」で56.5%となっていますが、2番目の「資金提供」は55.1%となっており、あまり差がありませんでした。

協業・支援・交流の理由を見ると、大企業と中小企業を比較して、大企業の方が高かったものは、「オープンイノベーションの推進」(大企業1%、中小企業21.1%、差異35ポイント)、「自社にない先進技術の獲得」(大企業64.5%、中小企業35.6%、差異28.9ポイント)でした。他方、中小企業の方が高かったのは、「販路拡大」(大企業11.2%、中小企業34.4%、差異23.2ポイント)となっています。「オープンイノベーションの推進」は、中堅企業では40.7%であり、リソース獲得という目標に加えて、企業規模が大きくなるにつれてイノベーションを起こすための推進施策にも目が向けられていると思われます。