食用油メーカーが “食べられない油” に挑む J-オイルミルズのサステナビリティの取り組みを紹介

食用油を製造・販売する株式会社J-オイルミルズ(以下当社)は、持続可能な社会の実現に向けさまざまな取り組みを進めています。

食用油メーカーが “食べられない油” に挑む
植物油搾油・酸化制御技術を活かし、持続可能な航空燃料(SAF)に挑戦

世界的な課題である“持続可能な社会”の実現。航空業界でもCO2削減に向けて、持続可能な航空燃料(SAF)の安定供給が求められています。

当社では、食用油の製造で培ってきた国内トップ規模の植物油搾油・酸化制御技術を活かし、“食べられない油” の活用にも取り組んでいます

当社では、食用油の製造で培ってきた国内トップ規模の植物油搾油・酸化制御技術を活かし、“食べられない油” の活用にも取り組んでいます

航空燃料(SAF)は非化石由来の原料から製造されますが、その技術プロセス・原料は複数あり、食用作物と競合の少ない原料の確保が課題の一つとなっています。このような中、東南アジアやオセアニアに分布するマメ科植物「ポンガミア」は、油収量効率の高い非可食油の原料樹であり、SAF原料としての活用が期待されています。

出光興産株式会社と当社は、非可食油原料樹である「ポンガミア」を豪州クイーンズランド州で植林することによるCO2固定化や、植林を起点とした植物原料の確保による持続可能なSAFのサプライチェーン構築などの検討に共同で取り組んでいます。また、サーキュラーエコノミーの実現に向け、バイオ原料確保によるSAF製造・プラスチックリサイクル・バイオ化学品活用などのバイオマス事業の構築に関する検討に共同で取り組むことを公表しています。

さらに2023年8月には、当社によるSAFの実証研究が、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の2023年度公募事業「バイオジェット燃料生産技術開発事業/実証を通じたサプライチェーンモデルの構築」の助成先として採択されました。2022年から引き続いて助成先として採択され、国立大学法人琉球大学、特定非営利活動法人亜熱帯バイオマス利用研究センター、沖縄県緑化種苗協同組合と連携して、非可食植物の活用を検討しています。

CO2削減を目指した直近の取り組みICPの導入」「工場への太陽光パネル設置」

温室効果ガス排出量削減に向けインターナルカーボンプライシング(ICP)制度を導入

インターナル・カーボンプライシング(ICP)とは、企業内部で独自に設定し使用する社内炭素価格であり、ICP制度は、企業の低炭素投資・対策を推進する仕組みです。現在、世界中の企業で導入が進められ、日本でも2021年時点で約280社が導入・検討をしており、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の開示要求項目においてもICPの実施が推奨されています。

当社では、「CO2中長期削減目標」の達成に向けた取り組みの一環として、低炭素投資・対策を推進するため、投資採算評価時の仕組みとして導入しています。

対象 CO2 削減効果を図る投資

適用範囲、
方法

対象となる投資計画によるCO2削減量に対し、社内炭素価格を適用し、投資判断の参考とする。

社内炭素価格 4,000円/t-CO2(導入時)

倉敷工場に太陽光発電設備を導入

当社倉敷工場では建屋屋上部分の一部に太陽光パネル約700枚を設置したことで年間約30万kwhをCO2フリー電力に転換し、年間で約160トンのCO2排出量低減を見込んでいます。

これからは油も紙パックの時代に!?紙パック入り食用油「スマートグリーンパック」シリーズ

プラスチック廃棄物やCO2を削減!油脂製品では珍しい紙パックを容器に採用
地球環境に配慮した容器・包装で環境負荷低減を追求

「スマートグリーンパックⓇ」シリーズは、プラスチック廃棄物やCO2の削減を推し進めるため、油脂製品では珍しい紙パック(森林認証紙)を容器に採用し、包装機能と環境対応を追求したシリーズです。2021年8月に2製品を販売開始後、2022年春にシリーズ化、その後もラインナップの充実を図っています。

プラスチック使用量を60%以上、CO2排出量を26%以上削減※1。海洋プラスチックごみ削減を目的に環境省が実施している「プラスチック・スマート」キャンペーンに参加しています。また廃棄時に容器を小さく折りたためるため、ごみの量(容積)を約1/2に削減 ※1。購入者からは「食用油はびんやプラスチックボトルで販売している製品が多い。可燃ごみとして廃棄できる紙パックに大賛成」などの声が寄せられています(廃棄方法は自治体により異なります)。

これまで紙パックの食用油製品が少なかった背景として、賞味期間が長期にわたるため浸透して漏れやすく品質を保ちにくいという課題がありましたが、本シリーズは、酸素バリア性と遮光性に優れた5層構造の紙素材を採用したことで課題を解決し、一部製品は未開封の状態での賞味期間が2倍(製造日から1年間→2年間※2)になりました。賞味期間の延長は食品ロスの削減につながります。

ただ環境に良いだけではお客様にご愛用いただけないとの想いから、使いやすさも徹底追求しました。最も開発に苦労したのは油がたれにくく、用途に応じて注ぐ量を選べるダブル構造の独自キャップです。ケチャップやマヨネーズなどのダブルキャップ製品は数多くあるものの、食用油は液がたれやすいため、ダブルキャップ製品はまだ珍しい状況です。当社は油がたれにくい最適な形状を何度も繰り返し検証。1年半かけてキャップを開発しました。現在販売中の当社製品の中でもダブルキャップタイプは本シリーズのみです。揚げ物など大量に使う場合は大口、フライパンに薄く油をひく場合は細口と使い分けられます。購入者からは「大きい注ぎ口と小さい注ぎ口があるので用途によって使い分けられて便利!」との声が寄せられています。

※1 当社計算。従来のプラスチック製の同容量帯容器と比較した場合。
※2 当社設定。従来のプラスチック製の同容量帯容器と比較した場合。

話題のプラントベースフード(植物性代替食品)が未来をつなぐ
植物生まれのチーズ「Violife(ビオライフ)」で食事をもっと“みんなが楽しめるおいしさ”に

“みんなが楽しめるおいしさ”を追求!
乳製品を使わない植物生まれのチーズ

当社では、近年広がりを見せている「プラントベースフード(植物性代替食品)」を家庭用・業務用で販売しています。その1つが植物性チーズ「Violife(ビオライフ)」です。
世界で愛される植物代替チーズの世界的パイオニア
Violife(ビオライフ)は、世界有数の一般消費者向けプラントベースフード企業であるアップフィールド社が展開する、プラントベースチーズ(植物性チーズ)のリーディングブランドです。

みんなが楽しめるおいしさを追求
国が定めたアレルギー物質(特定原材料等)28品目不使用で、“みんなが楽しめるおいしさ”を追求しました。ヴィーガン・ベジタリアンの方だけでなく食物アレルギーをお持ちの方や健康志向の方からも高い評価を得ています。

食事を楽しみながら地球環境の負荷低減に貢献
ココナッツオイルなどの植物を主原料としており、乳牛を生育する工程が不要なため、生産から廃棄までのライフサイクルにおける“CO₂排出量” 、“土地占有面積” など 環境負荷を7割低減します。(※3)

(※3)スイス・環境コンサルティングQuantis社調べ。日本国内で販売される乳製品チーズ:輸入品(86%)は欧米、オーストラリア、ニュージーランド産のデータを、国産品(14%)は代替としてニュージーランド産のデータを使用しています。評価は2022年4月当時、植物性チーズ4製品「Violife スライス/モッツァレラ7枚(140g)」「Violife シュレッド/チェダー200 g」「Violife スライス/チェダー7枚(140g)」「Violife クリーミィ150g」の家庭用4製品に対して実施。2023年6月現在のパッケージ・容量等とは異なる製品もあります。https://www.j-oil.com/consumer/pbf.html 

原料を無駄にしない取り組み
副産物の油粕(ミール)も飼料や肥料などの貴重な原料として活用

原料を無駄にしない取り組み

当社を含む植物油メーカーでは、大豆や菜種などから油分を搾油した後の副産物である脱脂粕「油粕(ミール) 」 も製品として出荷しています。特に大豆ミールは高品質のたんぱく質を含むため、飼料(動物のえさ)や肥料、醤油や味噌などの貴重な原料として、広く活用されています。

このように植物油メーカーは、原材料である油糧種子を油とミールに分離し「植物の持つ可能性を余すことなく利用している」と言うことができます。

当社が実践する「ゼロエミッション」

当社では、工場・事業所から発生する産業廃棄物について、単純焼却・埋立処分を行わないこと(再資源化率99.9%以上)を「ゼロエミッション」と定義し、 実践しています。

その一環として、エネルギーや原料、⽔、資材などの投⼊量の削減、排出される汚染物質や廃棄物を減らす取り組みや再資源化などに努めるほか、化石燃料由来のプラスチック使用量の削減にも努めています。また、生産部門だけにとどまらず、 ⾮⽣産部⾨においても廃棄物に関するe-ラーニングや環境セミナー等を社内教育として実施し、全社を挙げて資源利用効率の最大化に取り組んでいます。

おいしさを長持ちさせ、環境負荷と労働負荷を低減
業務用 長持ち揚げ油「長徳(ちょうとく)」とは

業務用製品を多く取り扱う当社は、長持ち油で環境・労働負荷の低減に取り組んでいます

当社の強みであり、連結売上高の大半を占める業務用油脂製品。中でも高付加価値品「長徳Ⓡ (ちょうとく)」シリーズは、当社の独自技術「SUSTEC Ⓡ (サステック) 」製法で、通常の油より3割長持ちさせることが可能です。おいしく揚げられる期間が延びることでサプライチェーン全体の環境負荷・労働負荷の軽減につながります。

2022年6月に長持ち油「長徳Ⓡ 」は、原材料調達から廃棄に至るまでの全ライフサイクルを算定した結果、CO2削減効果が認められ、シリーズとしてカーボンフットプリント国際規格準拠のカーボンフットプリント(CFP)マークを取得しました。さらに2023年8月には「すごい長徳5品目で追加取得いたしました。