第11回「全国生協産直調査」結果 ~生鮮6部門の産直供給高2,750億円、産直比率30%~ ~価格については、生産者も組合員も厳しい実態が明らかに~

共創のプラットフォームをめざして

日本生活協同組合連合会(略称:日本生協連、代表理事会長:土屋 敏夫)は、「全国生協産直調査」の調査結果を取りまとめましたのでご報告いたします。

 「全国生協産直調査(生協の産直事業と食料・農業問題の取り組みに関する調査)」は1983年度に第1回調査を実施して以来、ほぼ4年毎に実施し、今回で第11回目の調査となります。生協産直の現状を評価し、今後の方向性と課題を提起することを目的として実施しました。①生協調査、②生産者団体調査、③生協組合員調査、④生協役職員調査の4つの調査を実施し、大きな変化があった5年間における生協産直の実態を明らかにするとともに、生協産直の役割を、これからより具体的な動きにしていくために5つの提言としてまとめています。
 詳しくは https://jccu.coop/jccu/data/pdf/santyoku_houkokusho_2024.pdf をご覧ください。

【生協産直の取り組み】
 1970年代から全国の生協で産直に取り組んでいます。生協産直は生産者と消費者がつながり、相互理解を深めることによって安全・安心、たしかな商品を組合員に届けること、持続可能な農業に貢献することを目指しています。

~調査結果の主なトピック~

■産直は生鮮部門において非常に重要な位置づけ(生鮮6部門の産直供給高2,750億円、産直比率30%)
 生鮮6部門の総供給高約8,500億円のうち産直の供給高は約2,750億円規模となっています。また、産直比率は、30%(青果31.8%、米55.6%、精肉40.6%、牛乳24.9%、卵70.4%、水産9.2%)となっており、生鮮部門において産直は非常に重要な位置づけにあります。
過去の調査と比較すると、精肉と卵の産直割合は調査ごとに増加しており、水産の産直割合も直近3回の調査の中では最大の値となっています。
一方、米の産直割合は減少しています。一部の生協の産直定義の見直しにより、牛乳の産直割合も大きく減少しました。
 また、生産者団体の約7割が、今後生協との取引を拡大したいという意向を示しています。生協や担当により生産者とのコミュニケーションレベルに違いはあるものの、生協との取引に対する満足度も高く、生産者団体にとって生協との産直取引は重要な取引であると言えます。

図表1    生協の産直割合と産直供給高の推移(生協調査)

注1) 2013年度実績は4事業連合・41単協、2017年度実績は4事業連合・40単協、2022年度実績は6事業連合・39単協の回答結果を元に集計している。また、各部門の総供給高・産直供給高について、正確な回答があったと判断できた生協のみを集計対象としている。
注2) 2023年度実績における牛乳の産直供給高については、一部の生協で産直商品の枠組みに見直しがあり、供給金額の大きい商品が産直商品外となったため、産直供給高が大きく減少している。

図表2    今後の生協への出荷の方向性(生産者団体調査)

 

■産直加工品は生協・生産者団体の双方で充実。さらなる拡大の可能性も
 生協で産直加工品の取り扱いがある割合は62.1%となっています。2022年度の産直加工品の供給額は約241億円となり、産直加工品は重要な商品となっていることが分かります。同様に、生産者団体においても、加工品の開発・生産がある割合は54.1%となっています。
 また、産直に限りませんが、加工品の開発・生産を行っている生産者団体のうち、69.4%が加工品を生協へ出荷しています。これらから、加工品の取り扱いは充実してきており、今後産直における加工品もさらに拡大する可能性を持っています。

図表3    産直加工品の取り扱いがある生協の割合(生協調査)

図表4    加工品の開発・生産および生協への出荷がある生産者団体の割合(生産者団体調査)

 

■持続可能な農畜水産業・地域の実現に向けた取り組みの広がり
 環境保全型農業・漁業による生産物の取り扱い状況については、有機JAS・特別栽培・独自ブランドの供給割合は合計で9.7%となっています。また、米の総供給においては、有機JAS・特別栽培・独自ブランドの供給割合は33.1%を占めています。 
 国産の農畜水産物の利用促進に向けた取り組みとしては、「収穫体験などの農畜水産業の体験機会の提供」「国内農業や地場産業について学ぶ学習会の実施」に取り組む生協が多くなっています。
 また、国産や地場食品の供給に関しても、専用コーナーの設置、シリーズ化・ブランド化、供給キャンペーン、マークの付与など、様々な取り組みが行われており、これらを実施している生協の割合は70.7%となっています。さらに、休耕田や耕作放棄地対策として、「飼料用米・稲の活用」に取り組んでいる生協は50.0%です。
 一方、生産者団体における持続的な農畜水産業やSDGsについて、何かしらの取り組みをしている団体が全体の8割以上を占めており、意識の高さが明らかになっています。生協産直は、生産者と共に、環境保全型農業・漁業や地産地消、耕作放棄地対策の取り組みなど積極的に取り組んできた歴史があり、今回の調査でもこれらの取り組みがしっかり進められていることが分かります。

図表5    環境保全型農業・漁業による生産物の取り扱い状況(生協調査)

注) 有機JAS、特別栽培、独自ブランドの供給実績については、調査対象生協のうち、これらの商品の供給金額について回答のあった生協の供給金額のみを合算している(供給金額が不明等で、無回答だった生協の供給金額は0円として集計されている)。

図表6    国産の農畜水産物の利用を促進するための取り組み(生協調査)

 

図表7    休耕田や耕作放棄地対策の取り組み(生協調査)

 

図表8    持続的な農畜水産業やSDGsを意識した取り組み(生産者団体調査)

■価格については、生産者も組合員も厳しい実態が明らかに
 生産者団体への影響について調査した結果、コロナ禍と生産資材価格の高騰による影響を確認しました。そこで明らかになったのは、コロナ禍の影響以上に、生産資材価格の高騰がより深刻な状況を生んでいることです。特に、「資材高騰の影響を取引価格に転嫁できていない」と回答した生産者団体が約80%に上り、「経営状況が悪化している」と回答した団体も36.8%に達しています。このため、生産資材価格高騰への対応が喫緊の課題となっています。この課題に対して、まずは適正価格での取引や必要な所得補償などの政策により、厳しい生産者の経営を持続可能なものにすることが大変重要です。生協は生産者の生産コスト上昇等の状況をしっかり把握し、価格については真摯に対応していかなければなりません。その上で、生産者の様々な努力により生産されている農畜水産物の価値を組合員に伝え、利用いただけるような努力や工夫をしていくことが、より一層求められています。
 一方で、近年の物価高騰の影響は組合員のくらしにも大きな影響を与えています。調査結果からは、組合員の低価格志向が一段と強まっている実態が明らかになりました。このような状況の中、生協は組合員のくらしを応援していくための商品供給も求められています。既存の流通形態に囚われない生協産直だからこそできる取り組みを強めていくことが重要になっています。

図表9    2019年度以降のコロナ禍の影響(生産者団体調査)

図表10    近年の生産資材価格高騰の影響(生産者団体調査)

図表11    産直商品がどのような価格であれば購入するか(組合員調査)

 

調査概要
①生協調査       2023年4月~7月実施(回答58生協・事業連合、回答率96.7%)
②生産者団体調査    2023年5月~7月実施(回答133団体、回答率74.3%)
③生協組合員調査    2023年6月実施
(日本生協連モニター:回答5,397人、回答率79.2%、パルシステム連合会モニター:回答877人、回答率49.2%)
④生協役職員調査    2023年5月~7月(回答3,836名)

【参考】生協産直への提言(抜粋)

提言1.持続可能な食と農畜水産業・地域をつくる共創のプラットフォームをめざす
提言2.次世代に向けた継承と人材育成の取り組みを進める
提言3.生協間連携を推進する
提言4.新たな形で生産者と組合員をつなぐ
提言5.品質保証の取り組みを生産者と共に推進する

提言1.持続可能な食と農畜水産業・地域をつくる共創のプラットフォームをめざす 
 生協産直の更なる発展のためには、生産者とのパートナーシップを強化するとともに、関係者すべてとの連携を促進することが最も重要です。これからの生協産直は、「持続可能な食と農畜水産業・地域をめざす」という共通の思いを持った関係者でつくられる共創のプラットフォームにしていくことです。それは、産地と生協をはじめ、流通、加工、製造、そして組合員まですべての関係者が従来の流通の枠組みに縛られず、生産から消費までを一つにつなげ、全体の価値を高めていくプラットフォームを創っていくことです。

従来の流通と生協産直

 このような生協産直のプラットフォームにより、気候変動による災害や疫病、国際情勢の不安定化のような事態が発生した際に、生協と生産者や関係者が、それぞれの持つ力を活かしながら復興や生産と消費を支えていくことができます。昨今の生産コスト上昇の課題に対しても、組合員へ生産環境や生産コストの実情を伝え、相互理解を深めることで、生産コストに見合った価格での供給の実現や、継続した利用に繋がるなど、持続可能な生産と消費をつくっていくことが可能になります。
 このような生協産直の取り組みは、今の日本のフードシステムが抱える各種課題を解決できるモデルになり得る可能性を持っています。 

 その他の提言の詳細などは https://jccu.coop/jccu/data/pdf/santyoku_houkokusho_2024.pdf をご覧ください。

以上