日本生協連 平和の活動 vol.3

~ピースアクションinヒロシマ・ナガサキが開催されるまで~

原爆の日を前に、全国から生協組合員3,000人が被爆地に集まるのはなぜ?

「平和とよりよい生活のために」―日本生活協同組合連合会(略称:日本生協連、代表理事会長:土屋 敏夫)は設立にあたって“協同組合は平和なくしては存立できない”との思いでこの理念を掲げ、平和活動「ピースアクション」に取り組んでいます。ピースアクションは、戦争・被爆体験の継承や、世界のさまざまな戦争や紛争、基地問題、憲法など、多角的なテーマで平和を考える生協独自の取り組みです。学んだことを参加者が地元に持ち帰り、くらしの中で平和について考える機会を広げていこうという狙いです。毎年広島、長崎、沖縄で学習講演会や、全国の生協組合員が集う交流会などを開催しています。近年は、広島・長崎で毎回延べ3,000人以上、沖縄で200人以上の参加があります。

特設サイト:https://peace.jccu.coop/hiroshimanagasaki/
※プログラム等はこちらの特設サイトからもご覧いただけます。取材のご案内は7月後半に発信いたします。

ピースアクションのプログラムが決まるまで

現地県生協連と日本生協連事務局で作成したプログラム案を元に、県生協連の会員生協(県内の地域生協、学校生協、大学生協、医療生協、職域生協など)・日本生協連の役員で構成される実行委員会が意見を交わして内容を決定します。前年秋から打ち合わせを開始し、月に1回程度のペースで会議や打ち合わせを実施しています。現地の下見も複数回行います。

戦後・被爆80年が迫るなか、今年は「継承」を強く意識したプログラムが組まれ、準備が進められています。今回新しく企画する「Change Makers-若者×生協で考える新しい平和活動-」は、「平和とよりよい生活のために」を理念に掲げる生協の職員自身が継承の主体となるために、生協の若手職員が学びを深めながら、企画を作り上げていくというプロセスを重視しています。

企画を検討する日本生協連の若手職員

新企画【Change Makers-若者×生協で考える新しい平和活動-】

2024年2月に日本生協連の若手職員4名が集まり、「ピースアクションinヒロシマ・ナガサキ」で実施する新しい分科会を考える「企画検討チーム」が発足。そこで考案した企画が「Change Makers-若者×生協で考える新しい平和活動-】です。ヒロシマ・ナガサキへの原爆投下より79年が経過し、『平和とはなにか』への意識が希薄化しつつある現代において、次世代に平和への想いを継承していくため、一歩目のヒントが得られる場とし、平和活動を盛り上げていくきっかけにします。

現地広島・長崎で平和活動を行っている若者による活動を始めるに至った経緯や現在の活動内容の講演、地元生協の若手職員等とのディスカッションを行い、それを受けて参加者同士が、もっと聞いてみたいこと・感じたこと・これからに活かしたいことなどを話し合います。

どなたでも参加いただけます。平和活動に一歩踏み出したいと思っているような方にぜひおすすめです。

2024年の「ピースアクションinヒロシマ」注目点

「子ども平和会議」5年ぶりに広島で開催

未来の担い手である子どもたち(小学生~高校生が対象、例年50人程度が参加)が事前学習やワークショップに参加し、平和について一緒に学び、考える企画です。コロナ禍以降はオンラインで開催していましたが、今年はハイブリッドで開催し、5年ぶりにリアルでも子どもたちが集います。事前学習で居住地域の戦跡を調べ、子ども平和会議の場に持ち寄り交流します。

交流後、平和についてできることを話し合い、会議後に会議の議長らがアピール文を作成し、後日発表を行います。

例年世相や社会状況を踏まえたアピール文がまとめられます。昨年は「ヒロシマの悲劇、ナガサキの惨禍を繰り返さないために、自らが被爆の実相に触れるだけでなく、さまざまなコミュニティやツールを用いて、人から人へ、記憶と記録を伝えていきます」という宣言がまとまりました。

2024年の「ピースアクションinナガサキ」注目点

【ミライの平和活動】東京大学大学院 渡邉英徳教授によるCO・OP PEACE MAP等の説明

東京大学大学院 渡邉英徳教授と日本生協連は8年ほど前からデジタル技術を用いた平和活動についての共同研究を行っています。研究の成果であるCO・OP PEACE MAPのご紹介や、現在の世界情勢についてデジタル技術を用いて解説いただくことなどを内容とした講演を予定しています。

昨年広島で開催した「ミライの平和活動」の様子

CO・OP PEACE MAP

生協は平和を希求する市民がつながる土台

戦後79年が経過し、戦争体験者や被爆者がいなくなる未来が間近に迫っています。そのことを暗示するかのように、ウクライナ戦争やガザ侵攻など、世界各地で戦火は絶えません。気候変動や激甚災害も頻発し、私たちの日常はかつてない危機に瀕しています。こうした困難な時期にあってこそ、一人ひとりがつながり合い、平和を希求し、行動していくことが求められます。生協は、市民がボトムアップでつながる有機的な組織であり、そうした活動の土台となり得ます。私自身も、広島・長崎の原爆や東日本大震災、能登半島地震などの戦災・災害を可視化する「デジタルアーカイブ」に市民のみなさんと取り組んでおり、日本生協連と共同で「CO・OP PEACE MAP」を開発しました。ピースアクションと連動する「ミライの平和活動展」も好評を博しており、今年は長崎で開催予定です。私たち、そして子どもたちのミライを平和にするために、ぜひ生協をベースにつながりあい、行動していきましょう。

渡邉英徳教授
※ご取材可能です

【継承者による被爆の証言】

被爆三世で、ヒロシマ・ナガサキで被爆した二重被爆者の山口彊(つとむ)さんの孫である原田小鈴さんから、「継承」の観点でお話いただきます。

「ピースアクションinヒロシマ・ナガサキ」に毎年組合員3,000人が集まるのはなぜ?

戦後・被爆80年を前に、被爆者の生の声を聴くことは年々難しくなっています。現地広島・長崎で直接被爆者の証言を聞いて、当時キノコ雲の下で起きた出来事に思いを馳せることの重要性を感じている方が大勢います。

日本生協連では1978年に原水爆禁止世界大会とは別に独自の集会として、今に続く「虹のひろば」を開始しました。それと並んで、各地の生協でも年間を通じて平和に関する学習会や地域の戦跡めぐりなどの取り組みが精力的に行われており、こういった日頃からの「草の根の取り組み」が積み重ねられることが、「ピースアクションinヒロシマ・ナガサキ」に多くの組合員が集まる理由と言えるでしょう。

集会に参加された方の中には、子ども平和会議に参加したお子さんが戦争や平和について学び・考えたことをまとめ、夏休みの自由研究として発表したり、中学生の参加者が自身の中学校の特別授業で全校生徒向けに参加報告を行ったりした事例もあります。

「2024 ピースアクション in ヒロシマ」開催概要

日時:2024年8月4日(日)~8月5日(月)
※8月4日(日)にヒロシマ・ナガサキ合同で「子ども平和会議」(ハイブリッド)を開催します

会場:広島県立総合体育館、合人社ウェンディひと・ まちプラザ、広島商工会議所
※プログラムにより会場が異なります。

開催テーマ:ヒロシマの心を世界へ~被爆79年 戦争も核兵器もない未来を~

主催:広島県生活協同組合連合会、日本生活協同組合連合会

「2024 ピースアクション in ナガサキ」開催概要

日時:2024年8月7日(水)~8月8日(木)

会場:長崎市民会館、長崎市役所、長崎被災協
※プログラムにより会場が異なります。

開催テーマ:戦争も核兵器もない平和な世の中を~被爆79年ナガサキの心を未来へ~

主催:長崎県生活協同組合連合会、日本生活協同組合連合会

※今後も日本生協連・各会員生協の平和の取り組みについて、発信していきます。
日本生協連 平和の活動 vol.0 ~「非力であっても無力ではない」―戦後80年と生協がつくる平和~
日本生協連 平和の活動 vol.1 ~「ビキニ事件」をきっかけにまき起こった原水爆禁止署名運動。そのなかで生協が果たした役割と「第五福竜丸エンジン保存運動」~
日本生協連 平和の活動 vol.2~毎年春に開催「ピースアクション in オキナワ」全国から沖縄に生協組合員が集い、沖縄戦や基地について考える3日間~

日本生協連 平和の活動 vol.2の中で、沖縄県生協連 代表理事 専務理事 東江(あがりえ) 建 氏 の漢字に誤りがありましたので、お詫びの上、訂正します。
誤:東江(あがりえ) 健 → 正:東江(あがりえ) 建