市民と行政が協力し、よりよいまちづくりを目指す 加古川市スマートシティ構想

日本初の取り組みからICTを活用した最先端の取り組みまで

兵庫県加古川市では、2016年より「見守りカメラ事業」、「見守りサービス事業」をスタートさせ、2017年からはスマートシティ(ICTを活用して地域課題を効率的に解決するまち)の実現につなげるため、「データ利活用型スマートシティ推進事業」に取り組み、「加古川市スマートシティ構想」を推進しています。

このたび、全国初の讀賣テレビ放送株式会社の放送波を活用した防災情報発信の実証実験が行われ、2月からは町内会や消防団などに約600個の受信機を配付します。また、2月22日には、IPDCの拡張性に着目したモデル実証を実施する予定です。これまで様々な取り組みを行ってきましたが、その一部をご紹介いたします。

◆【加古川市のスマートシティ構想について】

~加古川市スマートシティ構想とは?~
加古川市では、ICTの活用により、市民生活の質を高め、市民満足度の向上を図り、「誰もが豊かさを享受でき、幸せを実感できるまち加古川」を実現するため2021年3月に「加古川市スマートシティ構想」を策定しました。
市のさまざまな課題について、市民と解決する「市民中心の課題解決型スマートシティ」を目指しています。

◆【見守りカメラと見守りサービス】

~安心して子育てができる街を目指し、誕生した「見守りカメラ」と「見守りサービス」~
加古川市では小学校の通学路や学校周辺を中心に「見守りカメラ」を設置し、通学時や外出時のお子様の安全を確保することで、市民の皆さんが安心して子育てができるまちを目指しています。
2017年には通学路や学校周辺を中心に900台の見守りカメラを設置し、翌年には公園周辺や駐輪場周辺、主要道路の交差点などを中心に575台の見守りカメラを設置。現在1,475か所で稼働しています。
見守りカメラには「ビーコンタグ(BLEタグ)検知器」が内蔵されており、子どもや認知症のため行方不明となる恐れのある方の位置情報履歴を保護者やご家族にお知らせする「見守りサービス」も行っています。

~「見守りカメラ」設置のきっかけ~
 「人通りが少ない場所を一人で下校する子が心配」という保護者の声がきっかけとなり、加古川市が「見守りカメラ」を設置することで、犯罪を抑止し、市民の安心・安全につながると考えました。
設置にあたり、1年以上の歳月をかけ、市民をはじめ、加古川警察署などと話し合いを重ねました。
また、岡田市長自ら市内各地区をまわり、オープンミーティングを実施し、行政の一方的な取り組みではなく、市民との対話を交え、理解や意見を双方向で確認しながら実現させました。

~「見守りカメラ」設置後の効果~
 兵庫県警がホームページ上で公開している市区町別刑法犯認知状況を分析した結果、加古川市の減少率は3年連続して県平均を上回っています。加古川市としては、「見守りカメラ設置による犯罪抑止効果の表れ」と考えています。

※データ出典  刑法犯認知件数:兵庫県警察ホームページ⇒各種統計

◆【自治体業務・各種申請などの効率化とICT活用】

~日本初の取り組み「加古川市版 Decidim(デシディム)」~
「Decidim」とは、オンライン上で市民と行政が対話して社会課題の解決につなげるツールとして、スペイン・バルセロナ市で誕生した“市民参加型合意形成プラットフォーム”です。
「Decidim」という言葉は、スペイン・カタルーニャ語で「決定しよう」または「決定する」という意味を持っています。
加古川市では、「加古川市スマートシティ構想」を策定する意見収集ツールとして 2020 年 10 月に日本の自治体で初めて「加古川市版 Decidim」を立ち上げました。
 このときは、「加古川市スマートシティ構想」の策定にあたり、Decidim 上で募集した意見に対して、オフラインワークショップや地元の高校の授業で議論を行いました。
導入初年度は登録した 300 ユーザーのうち約 4 割が 10 歳代という極めて特徴的な使われ方になり、最終的には261 件のコメントが寄せられ、スマートシティ構想案への反映を行いました。
2021年からは、新築する施設の愛称募集や市内を流れる一級河川「加古川」の河川敷利活用アイデアの募集をはじめ、様々なテーマで意見交換や提案が行われています。
2022 年 4 月にオープンする複合施設の愛称募集では、クラウドソーシングで集めた愛称候補の中から絞り込みを行う際に Decidim の投票機能を活用しました。
その後、施設の周辺住民に回覧板による投票の実施や、利用想定の市民が目にとまるよう市内各地でシールによるオフライン(リアルの場)投票をしてもらうなど、オンラインとオフラインを組み合わせるタイミングについても工夫を凝らしながら実施しています。
Decidim を活用して施設の愛称決定のプロセスを共有することで、「自分も愛称決定に参加した」という実感から、施設利用までつながるエンゲージメントの獲得という大きな流れを作り、デジタル・プラットフォームを活用した合意形成のベストプラクティスの一例となりました。

■加古川市 市民参加型合意形成プラットフォーム
https://kakogawa.diycities.jp/?locale=ja
■加古川市版 Decidim 公式資料 
https://www.city.kakogawa.lg.jp/material/files/group/10/r2-2-sumasikyougidecidim.pdf

~加古川市職員が発案した全国初、独自のオンライン申請システム、最短で市民に給付金を~
 2020年に全国一律に給付された特別定額給付金において、加古川市はマイナンバーカードを不要とした独自のオンライン申請システムを構築し、市民はオンラインでも手軽に申し込め、市では入力などの工数を短縮でき、給付までの時間をできる限り短縮するという、加古川市独自の「郵送ハイブリッド方式」を実現しました。
また、加古川市では市民の一番の関心事項であるいつ振り込まれるかについてもオンライン上で申請処理状況の確認ができるシステムも構築しました。
このオンライン申請システムは加古川市職員が発案し、システム構築まで外部に委託することなく独自で進め、発案から1週間でスタートし、とてもスピーディーに進めることができました。
市民の声が好評だったこともあり、「興味のある他の自治体にも自由に使ってほしい」という加古川市の意向でシステムのテンプレートをオープンデータとして公開しています。

■「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2021」の受賞について
https://www.city.kakogawa.lg.jp/material/files/group/1/kiji20210824chihoukoumuingahontounisugoitoomouchihoukoumuinawa-do2021wojushou.pdf

■第16回マニフェスト大賞 優秀賞受賞について
https://www.city.kakogawa.lg.jp/material/files/group/1/kiji20211125dai16kaimanifesutotaishouyuushuushouwojushoushimashita.pdf

~「オンライン申請(スマート申請)」、「くらしの手続きガイド(スマートナビ)」の運用~
2021年9月1日から一部行政手続きのオンライン申請(スマート申請)、引っ越しなどのライフイベントの際に必要な行政手続きや持ち物、窓口などがPC、スマホで確認できる「くらしの手続きガイド(スマートナビ)」の運用を開始しています。

■「オンライン申請(スマート申請)」
https://www.city.kakogawa.lg.jp/soshikikarasagasu/shiminbu/siminka/32236.html

「オンライン申請(スマート申請)」は、その名の通り、スマートフォンからマイナンバーカードを用いて、住民票の写しや印鑑登録証明書などの交付申請や転出届といった手続きができるサービスです。市役所に出向くことなく、いつでもどこでも申請ができるようになっています。

■「くらしの手続きガイド(スマートナビ)」
https://www.city.kakogawa.lg.jp/soshikikarasagasu/shiminbu/siminka/32287.html

「くらしの手続きガイド(スマートナビ)」は、引越しや結婚、妊娠・出産などのライフイベントにおいて、パソコンやスマートフォンから簡単な質問に答えるだけで、個人の状況に応じた必要な行政手続きや持ち物、窓口を確認することができるサービスです。
「どのような手続きが必要か」「どの窓口に行けばよいか」「持ち物は何か」などの疑問にわかりやすく丁寧に答えることで市民の利便性向上に寄与するだけでなく、市民からの問い合わせ件数を削減することで職員の事務負担軽減にも繋げています。

◆【市民が充実したスマートシティライフをおくるための取り組み】

~高齢者向け「スマートフォン講座」の実施、高齢者にやさしいまちづくりへ~
 「加古川市スマートシティ構想」において、ICT活用は切り離せないものですが、市民の中には当然、苦手な方や使いづらいと感じる方も多くいらっしゃいます。
そのような方たちに向けて、加古川市は市内の公民館で、「スマートフォン講座」を実施しています。
昨年12月には、市内の東播工業高等学校の生徒が講師を務めるスマートフォン教室を、コープ店舗で開催し、スマートフォンアプリの操作方法などについて、17名の高齢者の方々にレクチャーしました。
参加者からは「気軽に聞けて、ちょっとしたことも親切に教えてくれてありがたい」という声が上がり、講師を務めた高校生たちも「自分の知識が役に立ち嬉しい」と感じていたようです。

 さらに、今年の1月7日には兵庫大学の学生たちが講師を務めるスマートフォン教室を市内の公民館で実施しました。コープこうべと兵庫大学については、加古川市と包括連携協定を結んでおり、加古川市が取り組む高齢者向けスマートフォン講座の主旨に賛同いただき、協力いただきました。
 また、市の若手職員も研修の一環で講師を務めるなど、産・学・官が連携して高齢者のデジタルディバイド解消に取り組んでいます。

 

~GIGAスクールの推進 次代を担う子どもたちの情報活用能力向上を目指す~
 加古川市では、文部科学省が推奨しているGIGAスクール構想についても注力しており、市内すべての小・中・養護学校(高等部を除く)の児童生徒に、一人一台のパソコン端末を配付しています。
市内全域をカバーする、地域BWA(Broadband Wireless Access)を活用し、学校内のほか、校外や家庭でもインターネットを使った学習を行うことができます。

◆【防災におけるデジタルの活用】

~テレビの放送波に防災情報などのデータを載せ配信する技術IPDCの活用~
加古川市は防災における取り組みとして、テレビの地上デジタル放送波を利用し、市民に災害情報を届けるシステムの導入を目指しています。
 この防災システムは、アンテナ端子につないだ受信機が、ブザーや音声、文字で市が発令した避難指示などを伝える仕組みです。ほとんどの家庭で受信できる地上デジタルテレビの放送波を活用することで、安定して情報を受け取ることができます。

 加古川市と讀賣テレビ放送株式会社は、同社の放送波を活用した防災情報の発信に合意し、昨年4月7日に全国で初めて契約を締結するに至りました。
昨年12月16日には、加古川市役所で実証実験が行われ、2月からは町内会や消防団などに約600個の受信機を配付します。
また、2月22日には、IPDCの拡張性に着目したモデル実証を実施する予定です。
 今後もデジタル技術を活用し、様々な分野で市民生活の利便性の向上、行政の効率化を目指します。