所長コラム:「無能だから免責」ロジックは、危機管理に使えない

企業であれ政治家であれ、反社会的勢力に対する危機管理は一瞬の油断も許されない、きわめて重要な課題のひとつであることは論を俟ちません。

旧統一協会と政治家の関係を巡り、いろいろなところで多様な議論が展開されていますが、ストンと肚落ちするものが見当たりません。そこで、危機管理広報のビジネスに携わる者として一言。

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「そのような団体とは知らずに行事に参加してしまい、挨拶だけして退出した」
「そのような団体の関連メディアとは知らずに取材に応じ、自らの政策に関する所見を述べた」

という類の釈明は、とくに与党政治家の場合、炎上や不信感を助長するリスクが大きいため避けるべきでしょう。

国民生活の安心安全を左右しうる重責を担う与党政治家は、「そのような…とは知らず、うっかり…してしまった」では取り返しがつきません。

すなわち、そのことを自覚していなかった事実、つまり「信じられないほどひどい重過失をやらかす無能な人間だと認める」ことは避けるべきなのです(次の選挙に出馬せず引退する場合を除く)。

とくに法務・警察・防衛・外交・文部科学(宗教法人行政)・消費者政策等に係る行政庁の要職に就いていた場合には、それにより国民生活の安寧に何らかのリスクを生じさせたとの疑念を招き、政治的致命傷となる可能性も否定できません。国民を守ってくれると信じていた政治家が、実は危機感知能力ゼロであったという衝撃がもたらす悪影響は計り知れないでしょう。

よって、「無能だから免責」というロジックはまったく通用しないことは肝に銘じておかねばなりません。

ではどうすればよいか。

こうした場合はむしろ
「当該団体が色々と社会問題を引き起こしてきたことは承知しており、これは全く容認できないし、賛同・助長する意図も全くない。だが、どのような方の1票も政治家にとっては貴重な1票であり、当時、厳しい選挙を控えた我が身としては、参加者全員が反社会的行動をとる集団であるとも言い難いと考え、一人でも多くの人に自分の政治信条を知って欲しいという思いが勝ってしまった。今となっては深く反省し、今後は一切の関係を断つことをお約束する。被害者救済に向け立法府の一員として汗をかかせていただくことで贖罪としたい」
と回答しておくよりほかはないでしょう。

ベストとは言い切れませんが、少なくとも自分の無能を盾に一時凌ぎをするよりははるかにましだと言えます。

※ 文中、意見にわたる部分は筆者の個人的見解であり、所属組織等とは無関係です